舌下免疫療法などのアレルゲン免疫療法は、スギ花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎の根治療法として期待されているが、治療応答性を予測するマーカーがなかった。福井大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の木戸口正典氏らは、スギ花粉の舌下免疫療法を施行している患者の治療応答性とヒト白血球抗原(HLA)遺伝子型を検証。HLA-DPB1*05:01遺伝子型を保有する患者は治療応答性が低いことをAllergy2022年2月12日オンライン版)に報告した。

舌下免疫療法、一部の症例で治療効果が乏しい

 舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎に対して根治性が認められる唯一の治療であり、2014年にスギ花粉症、2015年にダニ抗原アレルギー性鼻炎に対し、承認されている。

 しかし、7割以上の症例に有効性が認められる一方、2年以上の長期治療にもかかわらず2〜3割程度の症例では効果が乏しいため、治療開始時に応答性を予測するバイオマーカーの開発が求められている。

 既報ではスギ花粉症患者では健康人と比較してHLA-DPB1*05:01遺伝子型の割合が高いこと(Tissue Antigens 1996; 47: 485-491、スギ花粉抗原ペプチドとペプチド結合ポケットであるHLA-DPβ1の立体構造的変化との関連が報告されており(J Mol Biol 2014; 426: 3016-3027)、同氏らは患者のHLA遺伝子型によって治療応答性が異なるのではないかと仮定して検討を実施した。

 対象はスギ花粉舌下免疫療法を行っているスギ花粉症患者203人(平均37.8歳)で、血液からDNAを抽出してHLA遺伝子型を決定し、治療応答性を分析。また、HLA遺伝子型と治療後の血清抗体量や、スギ抗原に対する血液の反応性との関連についても検討した。

IL-10産生能が治療応答性に関連

 検討の結果、HLA-DPB1*05:01遺伝子型を保有しない患者と比べ、保有する患者では治療応答性が低いことが明らかとなった()。また、HLA-DPB1*05:01遺伝子型を保有する患者は治療後のスギ花粉抗原に対するインターロイキン(IL)-10産生量が有意に低いことも示されたことから、HLA-DPB1*05:01遺伝子型を保有する患者はIL-10産生能が低いことにより舌下免疫療法への応答性が弱い可能性が示唆された。

図. HLA-DPB1*05:01遺伝子型とスギ花粉舌下免疫療法の治療効果との関連

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(福井大学プレスリリース)

 木戸口氏らは、「HLA遺伝子の遺伝学的検査を用いることでスギ花粉症に対する舌下免疫療法の治療効果を事前に予測し、適切な医療の提供につながる可能性がある」と結論。実臨床での応用を前提として、より簡便に安価で検査可能な方法として、HLA-DPB1*05:01遺伝子型と強い連鎖不平衡にある一塩基多型を用いた検査方法を提案している。

(安部重範)