カナダ・University of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らは、米国の大規模保険請求データベースを用いて高齢男性21万例超対象のコホート内症例対照研究を行い、勃起不全(ED)の治療薬であるシルデナフィル(商品名バイアグラ)をはじめとするホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬の常用に伴う眼障害のリスクを検討。その結果、PDE5阻害薬の常用者では非使用者と比べて漿液性網膜剝離(SRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、虚血性視神経症(ION)のリスクが高かったとJAMA Ophthalmol2022年4月7日オンライン版)に発表した。

PDE5阻害薬の月間処方件数、米国で約2,000万件

 PDE5阻害薬は、2020年の米国における月間処方件数が約2,000万件と極めて多いにもかかわらず、眼有害事象のエビデンスは大部分が症例報告や小規模疫学研究に基づくもので、リスクの定量的データは乏しい。

 そこでEtminan氏らは、米国の民間医療保険請求データベースIQVIA PharMetrics Plusを2006年1月1日から2020年12月31日まで検索。PDE5阻害薬の新規使用者21万3,033例(シルデナフィル12万3,347例、タダラフィル7万8,609例、バルデナフィル6,604例、avanafil4,473例)を抽出し、SRD、RVO、IONの新規診断または医療保険の登録抹消の時点まで平均3.8年追跡した結果、278例がSRD、628例がRVO、240例がIONと診断されていた。

 症例群1例に対し年齢および研究登録時期をマッチングさせた対照4例を選出、症例群1,146例と対照群4,584例を症例対照分析に組み入れた(両群の平均年齢64.6歳)。主要評価項目はSRD+RVO+IONの新規診断の複合とし、PDE5阻害薬の常用者(診断前の1年間に3カ月ごと1回以上処方)と非使用者で眼有害事象リスクを比較した。

SRD+RVO+ION複合リスクが非使用者の1.85倍

 症例群は対照群に比べて高血圧(24.6% vs. 8.9%)、糖尿病(38.1% vs. 26.1%)、冠動脈疾患(36.1% vs. 24.0%)、睡眠時無呼吸(15.5% vs. 10.6%)の有病率が高かった。

 1万人・年当たりの眼有害事象発生率は、SRD+RVO+ION複合が15.5、SRDが3.8、RVOが8.5、IONが3.2だった。

 高血圧、冠動脈疾患、喫煙、糖尿病、睡眠時無呼吸(ION例のみ)を調整後の条件付きロジスティック回帰モデルによる分析の結果、PDE5阻害薬の非使用者に対し常用者ではSRD+RVO+ION複合リスクが高かった〔調整後発生率比(aIRR)1.85、95%CI 1.41~2.42〕。個別の分析でも、非使用者に対し常用者ではSRD(aIRR 2.58、95%CI 1.55~4.30)、ION(同2.02、1.14~3.58)のリスクが高く、RVO(同1.44、0.98~2.12)リスクも高い傾向にあった。

用量依存性にリスク上昇

 また、PDE5阻害薬の使用と眼有害事象リスクとの間には用量依存性が見られ、処方回数が5回未満の者に対し5回以上の者ではSRD+RVO+ION複合(aIRR 2.90、95%CI 1.15~3.81 vs. 同1.74、1.10~6.77)、SRD(同1.90、1.41~2.55 vs. 1.73、1.14~2.64)、RVO(同2.39、1.38~4.14 vs. 3.30、1.48~7.38)、ION(同1.55、1.00~2.40 vs. 1.25、0.70~2.21)のリスクがいずれも高かった。

 以上を踏まえ、Etminan氏らは「PDE5阻害薬の常用がSRD、RVO、IONのリスクを高める可能性が示唆された。PDE5阻害薬常用者は同薬の眼有害事象について理解し、なんらかの視覚障害を経験した場合は速やかに主治医に報告する必要がある」と結論している。

(太田敦子)