米・Duke University School of MedicineのJonathan P. Piccini氏らは、脳卒中リスクを有する心房細動患者を対象に、治療中の出血の発生率を検証し、新規の経口凝固第XIa因子(FXIa)阻害薬asundexianの至適用量を決定することを目的とした第Ⅱ相ランダム化比較試験(RCT)PACIFIC-AFを実施。凝固第X因子(FXa)阻害薬アピキサバンと比べ、asundexianの1日1回20mgおよび50mgの投与は出血率が低かったことをLancet2022; 399: 1383-1390)に報告した(関連記事「第Ⅺ因子に作用する新規抗凝固薬を解説」)。

CHA2DS2-VAScスコア男性2点以上、女性3点以上が対象

 脳卒中リスクが高い心房細動患者では経口抗凝固薬による予防が推奨され、ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬よりも安全かつ有効とされるアピキサバンなどの直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が頻用されている。しかし、出血への懸念は解消されていない。

 PACIFIC-AF試験は45歳以上で男性はCHA2DS2-VAScスコア2点以上、女性は3点以上の高い出血リスクを有し、ベースライン時または過去12カ月以内に心房細動と診断された患者が対象。2020年1月30日〜21年6月21日に14カ国(欧州12カ国、カナダ、日本)の93施設で862例を登録、asundexian 20mgを1日1回投与する20mg群(251例)、asundexian 50mgを1日1回投与する50mg群(254例)、アピキサバン5mgを1日2回投与するアピキサバン群(250例)に1:1:1でランダムに割り付けた。主要評価項目は国際血栓止血学会(ISTH)基準に基づく大出血または臨床的に問題となる出血の発生率とした。

asundexian両群でFXIa活性を阻害

 解析対象は20mg群が249例、50mg群が254例、アピキサバン群が250例だった。平均年齢は73.7±標準偏差(SD)8.3歳で女性が41%、慢性腎臓病患者が29%を占め、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.9±SD1.3点だった。

 asundexian投与4週間後のFXIa活性阻害率は、20mg群ではトラフ値で81%、ピーク値で90%だった。50mg群ではそれぞれ92%、94%と、両群では同等のFXIa活性阻害が示された。

アピキサバンに比べ出血が67%減

 主要評価項目である出血イベントの発生率は、アピキサバン群に対し20mg群で50%低減(発生率比0.50、90%CI 0.14〜1.68)し、50mg群では84%低減(同0.16、0.01〜0.99)した。両群をプールしたasundexian群の出血イベントの発生率は、アピキサバン群に対し67%低減(同0.33、0.09〜0.97)した。

 ISTH基準の大出血イベントの発生は3群ともになく、臨床的に問題となる出血イベントが10例に認められた(20mg群3例、50mg群1例、アピキサバン群6例)。なんらかの出血イベントは48例に発生し、全体的に出血イベントの発生率はアピキサバンに比べasundexian群で低かった。

asundexian両群とも忍容性良好

 有害事象の発現率は20mg群47%(118件)、50mg群47%(120件)、アピキサバン群49%(122件)と3群で同等だった。治療中止につながる有害事象の発現率も3群で同様で、死亡はそれぞれ1例、3例、2例発生した。

 PACIFIC-AF試験は、脳卒中リスクを有する心房細動患者を対象としてasundexianによる出血リスク低下をアピキサバンと比較した初のRCTである。Piccini氏らは「アピキサバンはビタミンK拮抗薬に比べて大出血のリスクが約3割低いにもかかわらず、asundexianがアピキサバンよりも出血イベントを大幅に低下させたことは注目に値する。また、試験の対象は出血リスクが高い症例であったことから、実臨床ではさらに出血リスクが低減する可能性がある」と結論している。

(宇佐美陽子)