新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が続く中、回復後に倦怠感や息切れ、認知機能障害などの後遺症が一定数で現れることが明らかになっている。Long COVIDと呼ばれ、症状が遷延化し、日常生活に支障を来す例も報告されている。嗅覚・味覚障害、めまい、耳鳴り、難聴を訴え、耳鼻咽喉科を受診する例もいることを受けて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は4月11日、特に嗅覚・味覚障害を来した患者への対応について声明を発表。同学会員に向けて、患者に対し治療には長期を要することを説明した上で、精神面でのサポートも含めた診療を行うよう求めた。

嗅覚障害は24%、味覚障害は16%に出現

 COVID-19罹患後の後遺症をめぐっては、厚生労働省が医療従事者向けに、症状の種類、症状別の治療法、留意点などを示した『COVID-19診療の手引き 罹患後症状のマネジメント』を昨年(2021年)12月に公開した。同手引きではCOVID-19の後遺症を「罹患後症状」と呼称している。

 手引きによると、代表的な罹患後症状は、①全身症状(倦怠感、関節痛、筋肉痛)、②呼吸器症状(咳、喀痰、息切れ、胸痛)、③精神・神経症状(記憶障害、集中力低下、不眠、頭痛、抑うつ)、④その他の症状(嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛)ーに分類される。

 また、後遺症の頻度について調査した海外の45件・9,751例のシステマチックレビューとメタ解析では、出現する症状は、倦怠感(40%)、息切れ(36%)、嗅覚障害(24%)、不安(22%)、咳(17%)、味覚障害(16%)、抑うつ(15%)の順に多く、嗅覚・味覚障害は比較的頻度が高いことが紹介されている。

 嗅覚・味覚障害の症状としては、①においを感じない・弱い、②においが以前と違って感じる(コーヒーのにおいがガソリンのにおいに感じるなど)、③何を嗅いでも同じにおい、④味を感じない・弱い、⑤食べ物がおいしくない、⑥味が違って感じる、⑦常に口の中が苦い・甘いーなどの訴えが見られる。

 味覚障害を訴える例は嗅覚障害を伴う場合が多く、味覚障害を単独で発症する頻度は低いと指摘。また、嗅覚障害を訴える患者の多くが嗅覚検査で異常低値を示したのに対し、味覚障害を訴える患者は味覚検査で正常値を示すことが多かったとして、「COVID-19罹患後の味覚障害の多くは、嗅覚障害による風味障害を発症しているものと思われる」と考察している。

治療法は未確立も、症状別に治療アプローチを提示

 今回、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、嗅覚・味覚障害を訴える例の多くが「異嗅症状、異味症状を自覚し、食欲の低下から身体面、精神面の不調を来す」と指摘。「現時点でCOVID-19 により発症し長期間持続する嗅覚・味覚障害に対する治療法は確立していない」としつつ、症状別に治療法を一部提示している。

 それによると、①鼻副鼻腔炎が存在する場合はステロイドの全身あるいは局所投与などで改善する場合もある、②鼻副鼻腔に異常を認めない場合、嗅神経性嗅覚障害とし通常の感冒後嗅覚障害治療に準じて当帰芍薬散や嗅覚刺激療法が有効な可能性がある、③味覚障害患者で血清亜鉛が低値を示す場合は、亜鉛製剤の適応と考えられるーとしている。

 なお、治療の参考資料として『嗅覚障害診療ガイドライン(2017年版)』を同学会のサイトで紹介している。

(小沼紀子)