健康的な生活習慣はアルツハイマー病のない健康余命の延長と関連することが示された。米・Rush University Medical CenterのKlodian Dhana氏らは、同国の一般住民を対象に健康的な生活習慣が平均余命に及ぼす影響を検討した結果をBMJ(2022年4月13日オンライン版)に発表。「適切な運動、認知機能を刺激する活動、健康的な食事の習慣は平均余命を延長し、残りの人生におけるアルツハイマー病認知症なしに過ごせる割合を増やす可能性がある」と述べた。

5つの生活習慣因子を評価

 世界のアルツハイマー型認知症およびその他の認知症患者は、2019年の5,700万例から2050年には3倍の1億5,200万例になると予測されている。健康的な生活習慣(適切な運動、認知機能を刺激する活動、健康的な食事)は認知症リスクを軽減し、平均余命を延長する可能性がある。高齢になるとアルツハイマー病リスクが上昇するが、健康的な生活習慣によりアルツハイマー型認知症の発症を遅らせられる可能性がある。しかし、それはアルツハイマー病以外の疾患を有する年数を増やす可能性もある。そこでDhana氏らは、アルツハイマー病の有無にかかわらず健康的な生活習慣が平均余命に及ぼす影響を検討した。

 対象は、一般住民におけるアルツハイマー型認知症の危険因子を検討するコホート研究Chicago Health and Aging Project(CHAP)に参加した認知症既往歴がない65歳以上の2,449人(平均年齢76歳、女性1,540人、男性909人)。質問票を用いて詳細な食事と生活習慣の5つの因子①地中海‐DASH食を組み合わせた神経変性遅延のためのMINDダイエット(全粒穀物、緑色葉野菜、ベリーが豊富で、ファストフード、揚げ物、赤身肉が少ない)、②晩年の認知機能を刺激する活動(読書、美術鑑賞、クロスワードパズルなど)、③少なくとも週に150分の身体活動、④禁煙、⑤低〜中程度の飲酒(純アルコール摂取量:女性1~15g/日、男性1~30g/日)―を調べた。各因子について、健康と評価された場合は1点、健康でないと評価された場合は0点とし、5項目を合計して健康的なライフスタイルスコア(範囲0~5点)を算出。4~5点を健康的な生活習慣、0~1点を非健康的な生活習慣とした。

女性は平均余命が3.1年延長

 1万3,047人・年の追跡期間中に、439例(20.8%)がアルツハイマー型認知症を発症した。

 年齢、人種、結婚歴、教育歴、APOEε4を調整後、非健康的な生活習慣の人に対する健康的な生活習慣の人のアルツハイマー型認知症リスクは女性〔ハザード比(HR)0.44、95%CI 0.32~0.59〕、男性(同0.30、0.19~0.47)ともに低かった。同様に非健康的な生活習慣の人に対し、健康的な生活習慣の人の死亡リスクは女性(HR0.56 、95%CI 0.49 ~ 0.65)、男性(同0.47 、0.39~0.57)ともに低かった。

 アルツハイマー型認知症患者における認知症発症後の死亡リスクを評価したところ、非健康的な生活習慣の女性に対し、健康的な生活習慣の女性で有意に高かった(HR1.31、95%CI 1.03~1.67)が、男性では有意な関係は認められなかった(同1.00、0.73~1.39)。

 65歳の女性のうち、健康的な生活習慣がある人の平均余命は24.2年(95%CI 22.8~25.5年)で非健康的な生活習慣がある人に比べ3.1年長かった(平均余命21.1年、95%CI 19.5~22.4年)。65歳時の平均余命におけるアルツハイマー型認知症を有する割合は、健康的な生活習慣の女性で10.8%(2.6年、95%CI 2.0~3.3年)に対し、非健康的な生活習慣の女性では19.3%(4.1年、同3.2~5.1年)。アルツハイマー型認知症がない65歳の女性で健康的な生活習慣の人の平均余命は21.5年(95%CI 20.0~22.7年)に対し、非健康的な生活習慣の人では17.0年(同 15.5~18.3年)と推定された。

 85歳の女性の平均余命は、健康的な生活習慣の人で8.5年(95%CI 7.7~9.4年)、非健康的な生活習慣の人では7.2年(同6.3~8.1年)で、アルツハイマー型認知症に罹患して生きる割合はそれぞれ30.9%(2.6年、95%CI 2.0~3.4年)と60.3%(4.4年、同3.4~5.4年)。アルツハイマー型認知症がない85歳の女性で健康的な生活習慣の人の平均余命は5.9年(95%CI 4.8~6.8年)に対し、非健康的な生活習慣の人では2.9年(同2.0 ~3.6年)と推定された。

男性は平均余命が5.7年延長

 一方、65歳の男性のうち、健康的な生活習慣がある人の平均余命は23.1年(95%CI 21.4~ 25.6年)で、非健康的な生活習慣がある人に比べ5.7年長かった(平均余命17.4年、95%CI 15.8~20.1年)。65歳時の平均余命におけるアルツハイマー型認知症を有する割合は、健康的な生活習慣の男性では6.1%(1.4年、95%CI 0.3~2.0年)に対し、非健康的な生活習慣の男性では12.0%(2.1年、同0.2~3.0年)。アルツハイマー型認知症がない65歳の男性で健康的な生活習慣がある人の平均余命は21.7年(95%CI 19.7~24.9年)に対し、非健康的な生活習慣の人では15.3年(同13.4 ~19.1年)と推定された。

 85歳男性の平均余命のうちアルツハイマー型認知症に罹患して生きる割合は、健康的な生活習慣の人では17.7%(1.5年、95%CI 0.5~2.1年)に対し、非健康的な生活習慣の人では46.0%(2.4年、同0.3~3.3年)。アルツハイマー型認知症がない85歳の男性で健康的な生活習慣の人の平均余命は6.8年(95%CI 5.3~9.3年)に対し、非健康的な生活習慣の人では2.8年(同1.6 ~6.1年)と推定された。

 以上から、Dhana氏らは「健康的な生活習慣は平均余命の延長に関連し、残りの人生におけるアルツハイマー型認知症なしに過ごせる年数を増やす可能性があることが分かった」と結論した。

 米・University of MichiganのHwa Jung Choi氏は同誌の付随論評(2022年4月13日オンライン版)で「医療システム、医療従事者、有給/無給の介護者への負荷を軽減するための世界的な取り組みにおいて、アルツハイマー型認知症とその他の認知症のリスクを軽減するための介入プログラムの開発と実施は極めて重要である」と強調とした上で、「健康的な生活習慣の増加を促進し、認知症の発症を遅らせることで、認知症のない人生を延長させる可能性がある」と指摘した。

大江 円