慢性腰痛患者は、痛みへの恐怖心や不安感、抑うつ気分など心理的負担を抱えるケースが多い。オーストラリア・University of SydneyのEmma Kwan-Yee Ho氏らは、腰痛患者に対するさまざまな心理学的介入による有効性および安全性を検証。結果を、BMJ2022; 376: e067718)に報告した。

97報・1万3,000例超のRCTを解析

 12カ月以上痛みが持続する慢性腰痛では、患者が抱える心理的負担が運動機能やQOLに重大な影響を及ぼす、とHo氏ら。これらの心理的負担は身体障害リスクとなりうることから、同氏らは慢性腰痛患者への心理学的介入の有効性と安全性を検証するシステマチックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。

 2021年1月31日までにMEDLINE、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、SCOPUS、CINAHLに登録された関連論文から、非特異的慢性腰痛患者を対象に心理学的介入による改善効果を検討したランダム化比較試験(RCT)を抽出。急性期や亜急性期患者を組み入れた試験などは除外し、下肢疼痛の有無にかかわらず18歳以上を対象とし、心理学的介入単独または他の治療法との併用を含む97報・1万3,136例を解析対象とした。

 心理学的介入には認知行動療法(CBT)、行動療法(BT)、マインドフルネス、カウンセリング、疼痛教育など17種類が含まれた。主要評価項目は身体機能および腰痛強度とし、恐怖回避や健康関連QOLについても評価した。臨床的有効性のカットオフ値は標準化平均差(SMD)0.50とし、0.20以上0.50未満を低い、0.50以上0.80未満を中等度、0.80以上を高いとした。

理学療法との併用が鍵、12カ月までの持続効果も

 解析の結果、身体機能はCBT+理学療法(SMD 1.01、95%CI 0.58〜1.44)および疼痛教育+理学療法(同0.62、0.80〜1.17)において介入終了後に臨床的有効性が認められた(エビデンスレベルは中等度)。特に疼痛教育+理学療法では介入終了後6カ月〜12カ月未満の中期的な持続効果が確認された(SMD 0.63、95%CI 0.25〜1.00、エビデンスレベルは低)。

 腰痛強度については、BT+理学療法(SMD 1.08、95%CI 0.22〜1.94)、CBT+理学療法(同0.92、0.37〜1.45)、疼痛教育+理学療法(同0.91、0.43〜1.42)で同様の結果が得られた(エビデンスレベルは低〜中)。BT+理学療法のみ、中期的な持続効果が認められた(SMD 1.01、0.41〜1.60、エビデンスレベルは高)。

 また、恐怖回避については、理学療法単独に対し、CBT+理学療法では臨床的意義が大きい有効性が示された(SMD 1.77、95%CI 0.65〜2.90、エビデンスレベルは中)。健康関連QOLは、疼痛教育単独、疼痛教育+理学療法、CBT+理学療法、心理カウンセリング+理学療法でより高い有効性が見られた。なお、心理学的介入の安全性について検討した20報中12報では、介入群における有害事象は認められなかった。

 以上から、Ho氏らは「非特異的慢性腰痛患者に対する心理学的介入は、理学療法との併用が最も効果的であることが示唆された」と結論。「特に疼痛教育とCBTは、介入後に一定の持続効果が認められた。しかしながら長期的な持続効果は確認されておらず、今後の研究で検証が必要である」と付言している。

松浦庸夫