過体重/肥満者における心血管危険因子は高齢者、特に女性におけるうつ病リスク上昇と関連することが分かった。スペイン・University of GranadaのSandra Martín-Peláez氏らは、同国の55~75歳のメタボリックシンドローム患者を対象に心血管危険因子がうつ病発症に及ぼす影響を検討した結果を、PLoS One2022; 17: e0265079)に報告。「過体重/肥満者では心血管危険因子を改善することで、高齢期のうつ病発症を予防できる可能性がある」と述べた。

女性、喫煙がうつ病と関連

 心血管疾患とうつ病には炎症や酸化ストレスなど共通する危険因子があり、密接に関連していると考えられている。うつ病は心血管疾患発症の危険因子である可能性が示されているが、心血管疾患がうつ病発症に及ぼす影響を検討した研究はほとんどなかった。

 そこでMartín-Peláez氏らは、同国で進行中の過体重/肥満者(男性55~75歳、女性60~75歳)に対する地中海式ダイエットの効果を分析する多施設研究PREDIMED-Plusにおける2020年6月のデータを用いて、メタボリックシンドローム患者における心血管危険因子(性、喫煙習慣、糖尿病、総コレステロール値、収縮期血圧、拡張期血圧)がうつ病に及ぼす影響を検討した。

 同氏らは、REGICORフラミンガム関数を用いてベースライン時に心血管疾患/内分泌疾患がない過体重/肥満者の心血管リスクスコアを算出、①低リスク(LR)群、②中リスク(MR)群、③高/超高リスク(HR)群―に分類。抑うつ状態は、ベースライン時と2年後にうつ病自己評価票Beck Depression Inventory-Ⅱ(BDI-Ⅱ)を用いて評価した。

 ベースライン時に6,545例を対象に心血管リスクとうつ状態の関係を、地中海式ダイエットを2年間行った後に4,566例を対象にその変化を、多変量(ロジスティック/線形)回帰モデルを用いて分析した。

 その結果、心血管危険因子などを調整後、女性〔オッズ比(OR)2.86、95%CI 2.33~3.50、P<0.001〕、喫煙習慣(同1.38、1.09~1.76、P=0.008)、糖尿病(同1.39、1.17~1.66、P<0.001)とうつ状態(BDI-Ⅱ 18点以上)との有意な関連が認められた。

総コレステロール低値・HRで高いうつリスク

 心血管リスクとうつ状態に関連は見られなかったが、心血管リスクを心血管危険因子別に分析すると、HR群の女性とうつ病リスクとの関連が認められた(OR 1.78、95%CI 1.26~2.50)。ベースライン時に総コレステロール値が低レベル(160mg/mL未満)だったMR群(OR 1.77、95%CI 1.13~2.77)とHR群(同2.83、1.25~6.42)ではうつ病リスクが高かった。

 一方、総コレステロール値が高レベル(240〜279mg/mL)だった女性のMR群ではうつ病リスクが低く(OR 0.50、95%CI 0.28~0.93)、総コレステロール値がより高いレベル(280mg/mL以上)だったMR群(OR 0.26、95%CI 0.07~0.98)とHR群(同0.23、0.05~0.95)ではうつ病リスクがさらに低下した。

MR、HRで2年後のうつ病リスク上昇

 地中海式ダイエットを2年間継続後の心血管リスクとBDI-Ⅱスコアの変化を見ると、両者に関連は見られなかった。しかし、心血管リスクを心血管危険因子別に分析すると、糖尿病患者は全例でBDI-Ⅱスコアが低下していた。糖尿病でLR群(調整後平均値±標準誤差-1.25±0.31点)に比べMR群(同-0.52±0.20点)とHR群(同-0.41±0.27点)でBDI-Ⅱスコアの低下幅が大きかった。一方、総コレステロール値が高レベル(240〜279mg/mL)のLR群ではBDI-Ⅱスコアの低下が見られなかったが(調整後平均値±標準誤差0.97±0.52点)、MR群(同-0.83±0.37点)とHR群(同-0.77±0.64点)の低下幅はより大きかった。

 以上を踏まえ、Martín-Peláez氏らは「過体重/肥満者で心血管リスクが高い/極めて高い場合は、高齢者特に女性においてうつ病との関連が見られた。心血管危険因子を改善することで、高齢期のうつ病発症を予防できる可能性がある」と結論。さらに「心血管高リスク者では、糖尿病、総コレステロール高値がうつ病リスクに影響を及ぼす可能性がある。今後は地中海式ダイエットの遵守など、その他の交絡因子の影響についても検討する必要がある」と述べている。

(大江 円)