米・Harvard Medical School and Harvard Pilgrim Health Care InstituteのJenny W. Sun氏らは、抗てんかん薬と2型糖尿病の発症リスクとの関連を検討するため、成人27万4,206例、小児7万4,005例を対象としたコホート研究を実施した。その結果、カルバマゼピン、ラモトリギン、オクスカルバゼピン、バルプロ酸のうち、2型糖尿病の発症リスクはバルプロ酸で最も高かったとJAMA Netw Open2022; 5: e226484)で報告した。

5剤の服用者を5年間追跡

 これまで抗てんかん薬の体重増加リスクは報告されていたが、2型糖尿病の発症リスクについてはほとんど報告がなかった。

 そこでSun氏らは、IBM Market Scan(2010〜19年)のデータを使用し、成人および小児における抗てんかん薬(カルバマゼピン、ラモトリギン、オクスカルバゼピン、バルプロ酸)による2型糖尿病発症リスクを検討する観察コホート研究を実施した。

 対象は、抗てんかん薬の服用を開始した20〜65歳の成人27万4,206例〔女性15万9,428例(58%)、平均年齢39.9±標準偏差(SD)13.2歳、カルバマゼピン2万6,641例、ラモトリギン13万2,739例、オクスカルバゼピン2万4,226例、バルプロ酸9万600例〕および、10〜19歳の小児7万4,005例〔同3万8,672例(52%)、15.6±2.6歳、2,532例、3万6,394例、1万2,434例、2万2,645例〕。5年間追跡し、2020年8月~21年5月のデータを解析した。

 除外基準は①過去に抗てんかん薬を使用したことがある、②過去に糖尿病(1型、2型、二次性、妊娠性糖尿病)と診断された、③メトホルミン以外の糖尿病治療薬を使用していた(糖尿病以外の疾患でメトホルミンによる治療を受けた場合も含める)、④過去1年間に妊娠または肥満手術を受けた−患者とした。

 主要評価項目は、追跡期間中の2型糖尿病の発症とした。ラモトリギンは体重増加との関連がないため参照群とし、治療開始による2型糖尿病発症のアウトカムをITT解析で、割り付けられた治療方針の遵守によるアウトカムをper protocol(PP)解析により推定した。

バルプロ酸ではラモトリギンより糖尿病を発症しやすい

 ITT解析の結果、8,432例(3.1%)が追跡期間(平均1.9年±SD 1.5年)中に2型糖尿病を発症した。

 成人では、バルプロ酸はラモトリギンと比較して、2型糖尿病発症リスクが高かった〔5年リスク差(RD)1.17%ポイント、95%CI 0.66~1.76%ポイント〕。これは、ラモトリギンを服用した1例が5年以内に同疾患を発症する場合、バルプロ酸の服用では87例が発症することに相当すると推定された。

 PP解析では、プロトコルの非遵守による打ち切りを追加したため、追跡期間は大幅に短くなった(平均6.0カ月±SD 8.0カ月)。

 ITT解析と同様、調整後の2型糖尿病発症リスクはバルプロ酸がラモトリギンより高い傾向にあった(5年RD 1.99%ポイント、95%CI -0.64〜5.31%ポイント)。

 また、いずれの解析においてもカルバマゼピンとオクスカルバゼピンはラモトリギンと比較して2型糖尿病発症リスクはより小さく、変動幅は大きかった。

 小児のITT解析では、ラモトリギンと比較してカルバマゼピン(5年RD 0.04%ポイント、95%CI -0.42~0.64%ポイント)、オクスカルバゼピン(同0.29%ポイント、-0.12~0.69%ポイント)、バルプロ酸(同0.18%ポイント、-0.09~0.49%ポイント)はいずれも発症リスクは小さく、変動幅が大きかった。

 以上から、バルプロ酸は成人における2型糖尿病発症リスクが最も高かった。小児でもおおむね同様であったが、推定値が小さく、ばらつきがあった。

 今回の結果についてSun氏らは、「最初に投与する抗てんかん薬の選択が、2型糖尿病の発症率と有意に関連する可能性があることを強調するものである。治療による代謝性副作用の可能性を懸念する患者や臨床医は、同疾患のリスクが最も低いラモトリギンの投与を検討すべきである」と述べている。

(今手麻衣)