嗅覚障害はさまざまな疾患や障害に関連しているが、死亡との関連は不明だった。シンガポール・National University of SingaporeのNatalie Yan-Lin Pang氏らは、9件のコホート研究のメタ解析を実施。嗅覚障害の罹患により全死亡リスクが約1.5倍となることをJAMA Otolaryngol Head Neck Surg2022年4月7日オンライン版)に報告した。同氏らは、正確な機序の解明にはさらなる研究が必要だとしている。

エビデンスの質とバイアスを評価

 嗅覚障害の罹患率は高く、全年齢で19~24%、65~80歳で50%超、80歳超では80%にもなる。嗅覚障害は、神経変性、心血管疾患、栄養障害、免疫障害などの合併症に関連するが、死亡との疫学的関連については結果に一貫性がなかった。

 Pang氏らは、PubMed、EMBASE、Cochrane Libraryのデータベースから2021年4月13日までに発表された関連研究を抽出。システマチックレビューとメタ解析により18歳以上の嗅覚障害患者における全死亡との関連を検討し、ハザード比(HR)を求めた。

 観察研究のバイアスリスクは、Newcastle-Ottawaスケールにより評価。PROSPEROにプロトコルを登録し、エビデンスの質はPRISMAおよびMOOSEガイドラインに従いGRADE法より評価した。交絡因子を最大限に調整したデータを、混合効果モデルを用いてプールした。異質性はI2検定により算出し、その原因をメタ回帰分析とサブグループメタ解析により検討した。また、出版バイアスについても質的・量的に評価した。

全死亡リスクが52%上昇

 Pong氏らはまず、後ろ向き観察研究1件と前向き観察研究10件における計2万1,601例のシステマチックレビューを実施。平均年齢は50~81歳で、北米が7件、欧州が2件、オーストラリアと中国の研究が各1件だった。10件はバイアスリスクが低く、残る1件は中等度のバイアスリスクと判定された。この1件を除外しても結論に変化はなかった。

 11件中9件をメタ解析に組み入れた。プール後のデータにおいて、嗅覚障害は全死亡リスクの有意な上昇と関連していた(HR 1.52、95%CI 1.28~1.80)。

 研究間の異質性は高かった(I2=82%)が、メタ回帰分析により、異質性の91.3%は、平均追跡期間が長くなるほどプール後の関連が弱くなることが原因であると分かった。11件中10件は嗅覚障害の評価に客観的指標を、1件は自己報告を用いていたが、効果サイズは同等だった。trim-and-fill補正とEgger検定により出版バイアスを検討後も、嗅覚障害と死亡リスクの関連は維持された。全体的なエビデンスの質は中等度だった。

健康度と老化のマーカーとなる可能性

 Pong氏らは「われわれが知る限り、嗅覚障害と死亡との疫学的関連についてのシステマチックレビューおよびメタ解析は初めてである。嗅覚障害が、全死亡と関連すること、健康度と老化のマーカーになりうることが示唆された」と述べている。今回の研究では因果関係は特定できないが、同氏らは介在因子の一候補としてフレイルを挙げている。ただし、「背景機序と介入の範囲を確立するには、さらに研究が必要である」と付言している。

 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う嗅覚障害については、「短期的な観察では死亡率低下と関連付けられているが、長期的な関連は現時点では不明」としている。

(小路浩史)