ラテンアメリカ・カリブ海諸国(LAC)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡者数は2022年3月時点で165万人と極めて多く、世界の死亡者の約28%を占める。ペルー・Universidad Peruana Cayetano HerediaのAlvaro Schwalb氏らは、LACでCOVID-19死亡者が多い原因を多角的に検証した結果、ソーシャルメディアなどを介した不確かな情報の大量拡散(インフォデミック)によりヒドロキシクロロキンやイベルメクチンといった有効性が証明されていない薬剤の使用が広まったことを確認。誤った安心感の醸成と有効性が証明されている感染対策の遵守不良につながったことが一因であるとJ Intern Med2022年4月12日オンライン版)に発表した。

インフォデミックの危険度が高い中南米・カリブ海諸国

 COVID-19の予防と治療をめぐっては、世界中で不確かな情報に基づきヒドロキシクロロキンやイベルメクチンを用いる動きが見られたが、LACも例外ではなかった。

 LACではヒドロキシクロロキンに関する介入試験が31件行われたが、多くはサンプルサイズが小さく(200例未満)、対照群が設定されていなかったため、なんらかの有益な結果が示されても信頼性に乏しかった。 

 イベルメクチンは臨床試験で有効性のエビデンスが示されていないにもかかわらず、ペルーとボリビアで拙速に軽症~重症COVID-19患者の管理ガイドラインに採用された。特に、イベルメクチンは比較的低価格の一般用医薬品(OTC薬)であり、COVID-19への効果と関連付ける信頼性に乏しいニュースが大量にソーシャルメディアに登場した。

 一方、LACにおいてCOVID-19による死亡率が高いことは、医療情報を得る手段としてソーシャルメディアを使用・信頼する人が多いことと関連付けられている。LACはインフォデミックの危険度を示す指数(Infodemic Risk Index)が高い国が多く、有害な可能性があるCOVID-19関連情報に接する頻度が極めて高いことが示唆された。Infodemic Risk Indexはペルーで99.1%、コスタリカで72.8%に上り、ハイチ、グアテマラ、コロンビア、ブラジルも中等度の危険度だった。

 Schwalb氏らは「感染・重症化予防のためになんでも試してみたいという気持ちは理解できるが、有害性や有効な公衆衛生対策の妨げになる場合もあると認識することの方が重要だ」と指摘している。

脆弱な医療体制での準備不足や医療アクセス格差も

 その他の要因として、感染流行への準備不足、脆弱な医療システム、社会経済的格差や医療アクセスの格差、公的支援の不足が相互に関連していることが指摘された。

 LACでは最初の感染者の発生が比較的遅かったため、他国での対策例と十分な準備期間があった。しかし、感染症流行への対応能力を示す世界健康安全保障指数(Global Health Security Index)は、全LACにおいて最初の感染者発生の1カ月前時点で備えが十分であることを示す高スコア(100点中66.7点以上)に達していなかった。

 世界保健機関(WHO)は、LACの大半で人口1,000人当たりの病床数が世界平均の2.9に達しておらず、ブラジルとチリで2.1、ペルーとコロンビアで1.6、エクアドルで1.5、ハイチではわずか0.7と推定。WHO北米支局(PAHO)は、集中治療室(ICU)に対応できる医師・看護師を約5万人増員する必要があると推定している。

(太田敦子)