抗寄生虫薬のイベルメクチンは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として期待され、これまで数多くの臨床試験が実施されているが、一貫した結果は得られていない。ブラジル・Pontifical Catholic University of Minas GeraisのGilmar Reis氏らは、発症早期の外来COVID-19患者を対象としたランダム化比較試験TOGETHERでイベルメクチン群とプラセボ群を比較。イベルメクチンにCOVID-19の重症化による入院の予防効果は認められなかったことをN Engl J Med2022年3月30日オンライン版)に報告した。

イベルメクチン400μg/kgを3日間投与

 イベルメクチンは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-1)やHIV、デングウイルス、ジカウイルスなどさまざまなウイルスに対する活性がin vitroで示されている。そのため、COVID-19治療薬としての同薬の転用に大きな期待が寄せられ、その有効性を評価するために数多くの臨床試験が実施されてきた。しかし、既報の結果は一致しておらず、結果の解釈もさまざまである。そこで、Reis氏らは、COVID-19の重症化による入院に対するイベルメクチンの予防効果を評価するため同試験を実施した。

 同試験では、ブラジルの12施設を受診した有症状のCOVID-19患者のうち、発症から7日以内でCOVID-19重症化の危険因子(50歳以上、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肺疾患、喫煙、肥満、臓器移植、慢性腎臓病または透析、免疫抑制療法、6カ月以内のがん診断またはがん化学療法)を1つ以上有する18歳以上の患者3,515例を組み入れた。このうち679例をイベルメクチン400μg/kgを3日間投与するイベルメクチン群に、679例をプラセボを投与するプラセボ群に、残る2,157例をヒドロキシクロロキン(244例)やロピナビル/リトナビル配合薬(214例)、メトホルミン(215例)など他の薬剤を投与する群にランダムに割り付けた。

 主要評価項目は、ランダム化後28日以内の入院またはCOVID-19の臨床的悪化による救急外来の受診(6時間超の経過観察が行われた場合と定義)の複合エンドポイントとした。

入院または救急外来受診の発生率に差なし

 今回、2021年3月23日~8月6日にイベルメクチン群およびプラセボ群のいずれかにランダムに割り付けられた患者を対象とする解析結果が報告された。年齢中央値は49歳(四分位範囲38〜57歳)、50歳以上は46.2%、女性が58.2%だった。主要評価項目の発生率は、イベルメクチン群で14.7%(679例中100例)、プラセボ群で16.3%(679例中111例)であった〔相対リスク(RR)0.90、95%ベイズ確信区間0.70~1.16〕。なお、主要評価項目が発生した211例のうち入院例は171例(81.0%)であった。

 また、イベルメクチンまたはプラセボを1回以上投与した患者のみが対象のmodified intention-to-treat(mITT)解析や、自己報告に基づくイベルメクチンまたはプラセボのアドヒアランスが100%であった患者のみが対象のper-protocol解析でも、主解析と同様の結果が得られた〔mITT解析:RR 0.89、95%ベイズ確信区間0.69~1.15、per-protocol解析:RR 0.94、95%ベイズ確信区間0.67~1.35〕。さらに、7日目の検査におけるSARS-CoV-2陰性、全入院、入院までの期間、臨床的回復までの期間、死亡リスクなどの副次評価項目に関しても、両群に有意差はなかった。

 以上の結果に基づき、Reis氏らは「イベルメクチンを用いたCOVID-19診断後早期の外来患者において、COVID-19の重症化を理由とした入院や救急外来での長時間の経過観察の頻度の低下は認められなかった」と結論している。

(岬りり子)