次世代のパーソナルモビリティとして注目されている電動キックボード。欧米の主要都市ではシェアライドサービスが急速に普及し、日本でも導入や自治体による実証実験が進められている。今年(2022年)4月には最高速度20km/時以下の電動キックボードは免許不要とする改正道路交通法が国会で可決された。そのような中、フィンランド・Tampere University HospitalのAleksi Reito氏らは、電動キックボード乗車中の事故により同院救急科を受診した患者を後ろ向きに検討する横断研究を実施。結果をJAMA Netw Open2022; 5: e227418)に報告した。

重症は上肢で高頻度

 タンペレは首都ヘルシンキに次ぐ都市圏人口を有しており、Tampere University Hospitalは55万人の住人に対する救急医療体制を担っている。同エリアでは2019年4月に電動キックボードのシェアライドサービスが導入され、検討時には2社がサービスを提供していた。

 Reito氏らは、医療記録データベースの遡及的検索により、2019年4月23日〜21年4月23日に電動キックボード乗車中に事故により同院救急科を受診した患者331例を抽出し、負傷の状態や発生率を検討した。

 患者の平均年齢は29歳〔±標準偏差(SD)9歳〕で男性が60.1%、50.4%が事故時にアルコールを飲用しており、深夜〜午前6時に発生した。

 331例で計527カ所の負傷が認められた。骨折または脱臼は31.1%で、橈骨遠位端骨折と鎖骨骨折の頻度が最も高かった(各12.6%)。負傷部位は頭部、顔部が多かったが、上肢や下肢の頻度も高く、特に上肢は重症例が多かった()。

表. 負傷部位

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JAMA Netw Open 2022; 5: e227418)

 手術の内訳は橈骨遠位端骨折が5例、顔面骨折、手の骨折、足首骨折が各3例、リスフラン関節損傷、創傷創面切除が各2例、鎖骨骨折、肘頭骨折、膝蓋腱断裂、大腿骨頸部骨折、脛骨骨幹部骨折が各1例だった。

 治療後、患者の多くは帰宅できたが、17例(5.1%)が入院し、3例(0.9%)は集中治療室に入室した。

負傷率は10万回乗車当たり18.0回

 同エリアにおける検討期間中の電動キックボードの走行回数は186万2,778回、走行距離は459万2,549kmだった。救急科を受診した負傷の発生率は、10万回乗車当たり18.0回(95%CI 16.2〜20.0回)、10万km走行当たり7.3回(同6.6〜8.1回)、重症の発生率はそれぞれ5.9回(同 4.9〜7.1回)、2.4回(同2.0〜2.9回)だった。

 Reito氏らは、「これまでに米・テキサス州オースティン運輸局による約3カ月、約90万回走行の検討があり、負傷の発生率は10万回乗車当たり20回であることが報告されていた。本研究は約2年間、約190万回走行での検討で、われわれが知る限り査読が必要な論文としては初の報告」と解説し、「今回の成績は電動キックボード乗車中の事故による負傷の発症率の新たな指標になる」と結論。「シェアライドサービス市場は成長を続けており、安全対策の評価にはさらなる研究が必要」と付言している。

(安部重範)