これまで数多くの研究で睡眠不足は肥満リスクを高めることが示されているが、睡眠不足が体脂肪の分布に及ぼす影響について検討したものはない。そこで、米・Mayo ClinicのNaima Covassin氏らは、健康で肥満がない男女12例を対象としたランダム化クロスオーバー試験で睡眠不足が局所体組成に与える影響を検討。不十分な睡眠によりエネルギー摂取量が増え、体重増加だけでなく内臓脂肪量の有意な増加が認められたとする結果をJ Am Coll Cardiol2022; 79: 1254-1265)に報告した。

好きなだけ食べられる状況下で睡眠時間を制限

 睡眠不足が肥満リスクを高めることは数多くの研究で示されているが、実験的研究に基づくエビデンスは少ない。また、睡眠不足が体脂肪の分布に及ぼす影響について検討した報告はまだない。そこでCovassin氏らは今回、食べ物を自由に摂取できる状況下での睡眠時間の制限が、エネルギー摂取量、エネルギー消費量、局所体組成に及ぼす影響について検討するため、ランダム化クロスオーバー試験を実施した。

 対象は、健康で肥満がない19~39歳の男女12例(男性9例)。試験期間は21日間で、試験は入院下で実施した。

 試験では、開始後4日間を睡眠時間が9時間の順応期間とし、その後14日間は睡眠時間を4時間に制限する睡眠制限期間または睡眠時間が9時間の対照期間のいずれかの期間とした後、3日間の回復期間を設けた。3カ月間のウオッシュアウト期間を経た後にクロスオーバーし、再び21日間の試験を行った。

回復期にエネルギー摂取量・体重減少も、内臓脂肪は増加は持続

 解析の結果、対照期間と比べて睡眠制限期間には1日当たりのエネルギー摂取量(P=0.015)、蛋白質摂取量(P=0.050)、脂肪摂取量(P=0.046)がいずれも有意に増加していた。一方、エネルギー消費量は有意な変化は認められなかった。

 また、対照期間と比べて睡眠制限期間には体重が有意に増加していた(P=0.008)。総体脂肪量に有意な変化は認められなかったのに対し、総腹部脂肪量は睡眠制限期間においてのみ9%の有意な増加が認められ(P=0.011)、腹部の皮下脂肪量の有意な増加(P=0.047)だけでなく内臓脂肪量も11%の増加が認められた(P=0.042)。

 以上を踏まえ、Covassin氏らは「自由に食べ物を摂取できる状況下での睡眠時間の制限は、過剰なエネルギーの摂取を促す一方、エネルギー消費量には変化をもたらさなかった」と結論。睡眠時間の制限によって体重増加および中心性の脂肪の蓄積が認められたことから、「睡眠不足によって腹部内臓肥満になりやすくなる可能性がある」と述べている。

 研究責任者で同院のVirend K. Somers氏は「回復期間にはエネルギー摂取量と体重が減少したにもかかわらず、内臓脂肪量の増加は持続していた。このことは、睡眠不足が内臓脂肪蓄積のトリガーとなり、その後睡眠時間を増やしても、少なくとも短期的には内臓脂肪の蓄積が解消されることはないことを示唆している」と説明している。

(岬りり子)