新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は認知症の発症リスクの上昇に関連するとの報告がある。米・Feinstein Institute for Medical ResearchのYun Freudenberg-Hua氏らは、COVID-19罹患後の認知症発症のリスクマーカーについて検討するため、高齢者に処方されることの多い向精神薬に着目。65歳以上のCOVID-19入院患者において、COVID-19罹患前の向精神薬の使用は、罹患後1年間の認知症リスクの上昇に関連していたとする後ろ向きコホート研究の結果をFront Med2022; 9: 841326)に報告した。

認知症の診断歴ない1,755例を解析

 神経症状や精神症状は、COVID-19の合併症として高頻度に見られることが報告されている。また、COVID-19に罹患した患者では、インフルエンザに罹患した患者と比べて認知症を発症するリスクが2倍との報告もあり、COVID-19は認知症の発症リスクを高める可能性も示唆されている。

 そこでFreudenberg-Hua氏らは、高齢者に広く処方されている向精神薬のCOVID-19罹患前の使用とCOVID-19罹患後1年間の認知症リスクの関連について後ろ向きに検討した。

 解析対象は、2020年3月1日~4月20日に米・ニューヨーク州のNorthwell Healthが経営する病院11施設にCOVID-19で入院した65歳以上の患者のうち、認知症または認知機能障害の診断歴がない1,755例。主要評価項目はCOVID-19罹患後1年間の認知症の発症(2021年4月20日までの受診時における認知症または認知機能障害の新規診断、認知症の治療薬の新規処方のいずれかを満たした場合)とした。

 COVID-19罹患前の向精神薬の使用と罹患後1年間の認知症リスクの関連については、ロジスティック回帰モデルを用いて解析した他、LASSO回帰および機械学習アルゴリズムを用いた解析も行った。

特に抗精神病薬が認知症リスクに強く関連

 COVID-19罹患後1年間の認知症の発症率は12.7%(223例)であった。解析の結果、COVID-19罹患後1年間に認知症を発症するリスクは、COVID-19罹患前に向精神薬を使用していた患者で2.7倍〔オッズ比(OR)2.7、95%CI 1.8~4.0、P<0.001〕、せん妄の経験があった患者では3.0倍(同3.0、1.9~4.6、P<0.001)であった。

 また、COVID-19による入院時に1つ以上の神経疾患または精神疾患の診断が記録されていた423例に限定して解析した結果でも、向精神薬の使用と認知症の発症との間に強い関連が認められた。

 さらに、向精神薬を種類別に解析した結果、特に抗精神病薬(OR 2.8、95%CI 1.7~4.4、P<0.001)と気分安定薬/抗痙攣薬(同2.4、1.39~4.02、P=0.001)がCOVID-19罹患後の認知症リスクに強く関連していた。向精神薬と認知症リスクの関連は機械学習のアルゴリズム(ランダムフォレスト)およびLASSO回帰による解析においても確認された。

 以上の結果に基づき、Freudenberg-Hua氏らは「COVID-19に罹患した高齢者は認知症を発症するリスクが高いことが先行研究で示されていたが、今回の研究でも同様の結果が得られた。また、COVID-19罹患前の向精神薬の使用は、認知症の前駆期に見られる神経精神症状を示すリスクマーカーとなる可能性がある」と述べている。

(岬りり子)