国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部部長の山村隆氏らは、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者を対象に、経口ステロイド薬などの免疫抑制薬に上乗せしたヒト化抗インターロイキン(IL)-6受容体抗体サトラリズマブの有効性と安全性を評価した第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験SAkuraSkyの非盲検継続投与試験(open label extension;OLE)のデータを解析。ステロイド減量効果と安全性を検証した結果、4割超(36例中16例)でステロイドの減量が可能で、うち3例はステロイドを完全に中止し、無再発を維持したとMult Scler Relat Disord2022年3月24日オンライン版)に発表した。

サトラリズマブ併用で再発リスク85%低下

 NMOSDは自己抗体である抗アクアポリン(AQP)4抗体によって中枢神経系を支えるアストロサイトが傷害され、可逆性の神経障害が生じて治療抵抗性の高度の後遺症を残す難治性の炎症性自己免疫疾患である。視力障害や運動麻痺などの症状が現れ、再発を繰り返すことが特徴だ。日本では、2020年8月にNMOSDに対する2剤目の抗体医薬としてサトラリズマブが上市され、治療選択肢が広がっている(関連記事「視神経脊髄炎治療薬サトラリズマブの実力」「視神経脊髄炎の再発予防薬の選択肢が拡大」)。

 SAkuraSky試験では、12~74歳のNMOSD患者83例を登録し、経口ステロイド薬を含む安定用量の免疫抑制薬に上乗せしてサトラリズマブ120mgを皮下投与するサトラリズマブ群(41例)とプラセボ群(42例)に1:1でランダムに割り付けて治療した。サトラリズマブ群ではプラセボ群と比べて再発リスクが85%低下することが示されていた(ハザード比0.15、95%CI 0.02~1.23)。

 再発の総数が26件に達した時点で盲検期間が終了し、ステロイド使用者36例がOLEに移行して経口ステロイド薬とサトラリズマブの併用療法を受けた。

 OLEにおいてステロイド減量を達成した患者は36例中16例(盲検期間のサトラリズマブ群8例、プラセボ群7例、OLEへの直接登録1例)で、平均年齢は44.9歳、全例が女性、日本人が14例(87.5%)、抗AQP4抗体陽性が15例(93.8%)だった。サトラリズマブの投与期間は平均163.6週間(標準偏差81.3週間、範囲68~285週間)で、50.2人・年の治療に相当した。

 ステロイド投与量の中央値はOLE開始時10mg/日(範囲5~25mg/日)→2020年2月18日のデータカットオフ日2.75mg/日(範囲0~15mg/日)と変化し、大半が数年間で漸減していた。また、3例が経口ステロイド薬の完全中止を達成し、OLE期間全体を通じて無再発を維持した。

安全性プロファイルは盲検期間と同等

 OLE期間におけるステロイド減量群において、サトラリズマブは忍容性が高く、安全性プロファイルは盲検期間と同等だった。有害事象の発現率(100人・年当たりイベント数)は盲検期間のサトラリズマブ群で485.2(95%CI 437.7~536.5)、プラセボ群で514.3(同458.2~575.2)、OLE期間のステロイド減量群で416.6(同362.1~477.1)だった。

 入院を要する重篤な感染症の発現は2件で、64歳の同一患者で生じた。ステロイド減量前にE型肝炎ウイルス(HEV)、減量中にインフルエンザへの感染が確認され、サトラリズマブの投与は感染の問題が解決するまで中断された。いずれもサトラリズマブ関連イベントでないと判定されている(HEV感染は加熱不十分な肉の摂取によるもの)。

ステロイド減量で再発リスク上昇せず

 OLE期間中に臨床的再発が生じたのは2例・3回で、いずれも重症〔身体障害の程度を示すExpanded Disability Status Scale(EDSS)スコア2以上の上昇〕ではなく、EDSSスコアは不変またはステロイドパルス療法により回復した。

 OLE期間全体での年間再発率は0.06回/年(95%CI 0.01~0.17回/年)で、盲検期間のサトラリズマブ群における0.32回/年(同0.10~0.74回/年)、プラセボ群における0.48回/年(同0.16~1.13回/年)と比べて低かった。このため、山村氏らは「ステロイド減量による再発リスク上昇は認められなかった」と結論している。

 さらに、同氏らは「ステロイド減量が患者に不安を引き起こし、偽再発(pseudorelapse)を招く可能性もある。実際の臨床診療においてステロイド減量を考慮する際には、眼所見や患者が訴える症状などを多角的に評価すべきである。ステロイド減量の適切なタイミングについても、今後の研究で検討する必要がある」と付言している。

(太田敦子)