出産年齢の高齢化に伴い増加する不妊治療。みやけウィメンズクリニック(千葉市)院長の三宅崇雄氏らは、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用い、自然妊娠による出生児と不妊治療による出生児における3歳時の神経発達状況を比較した。その結果、不妊治療による出生児で発達遅延の頻度が高かったと、Reprod Med Biol2022; 21: e12457)に報告した。

約7万8,000人のデータを解析

 エコチル調査は、胎児〜小児期の化学物質曝露と健康への影響を検討する大規模出生コホート調査。三宅氏らは同調査の登録例のうち、自然妊娠(7万924人、男児51.3%)、一般不妊治療(4,071人、同50.3%)、体外受精(IVF、1,391人、同53.3%)、顕微授精(ICSI、1,542人、同49.3%)により出生した児、計7万7,928人の3歳時の神経発達状況を比較した。なお、不妊治療には排卵誘発・人工授精を行う一般不妊治療と、それらで妊娠が得られない場合に用いられるIVF・ICSIの生殖補助医療(ART)などがある。

 神経発達状況の評価には、自閉症スクリーニング質問票の日本語版ASQ-3を用いた。ASQ-3は、言葉の理解および会話(コミュニケーション)、腕や脚など大きな筋肉を使う動き(粗大運動)、手指の細かい動き(微細運動)、手順を考慮した行動(問題解決)、他者とのやり取りに関する行動(個人と社会)の5領域で構成され、保護者の回答を基に発達度を評価する。

不妊治療による出生児の発達遅延、治療より親の年齢に起因か

 ロジスティック回帰分析を用いて、自然妊娠による出生児に対する不妊治療別の出生児の3歳時におけるASQ-3スコアのオッズ比(OR)を求めた。その結果、ASQ-3の各スコアは一般不妊治療による出生児では問題解決を除く4領域、IVFによる出生児ではコミュニケーションを除く4領域、ICSIによる出生児では粗大運動のみでORが1.22〜1.76と、発達遅延の頻度が有意に高いことが示された(全てP<0.05)。しかし、両親の年齢や児の性などを調整したところ、一般不妊治療による出生児の微細運動(調整OR 1.16、95%CI 1.03〜1.30を除き)発達遅延との関連は消失した。

 以上から、三宅氏らは「自然妊娠による出生児と比べ、不妊治療による出生児では3歳児の発達遅延の頻度が高いことが分かった」と結論、「しかし、この結果はIVF、ICSIといった不妊治療の技術に起因するものではなく、主に両親の年齢など不妊に関わる要因に加え、多胎妊娠やそれに伴う妊娠合併症、母体内での発育不全が関係している可能性がある」と考察している。

松浦庸夫