抗うつ薬の服用は、うつ病患者の健康関連QOL(HRQoL)を長期的には改善させないことが分かった。サウジアラビア・King Saud UniversityのOmar A. Almohammed氏らは、抗うつ薬がうつ病患者のHRQoLに及ぼす影響を検討した結果をPLoS One2022年4月20日オンライン版)に発表した。

2年間のHRQoLの変化を比較

 文献ではうつ病患者の治療における抗うつ薬の効果が示されているが、患者の幸福感やHRQoLに対する抗うつ薬の効果については一貫した結論は出ていない。そこでAlmohammed氏らは、抗うつ薬の効果を患者の自己申告によるHRQoL評価で検討した。

 同氏らは、2005~15年の米国医療費パネル調査(MEPS)から施設に収容されていない18歳以上のうつ病患者の医療データを抽出し、抗うつ薬がHRQoLに及ぼす影響を検討した。HRQoLは自己申告形式HRQoL尺度(SF-12v2)の身体的QOLサマリースコア〔PCS:身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感、活力〕と精神的QOLサマリースコア〔MCS:社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康〕をベースライン時と2年後に測定し、両時点の最小二乗平均値の差を差分の差分法(D-I-D)で分析、評価した。

 検討の結果、試験期間(2005~16年)中に年に平均1,747万例がうつ病と診断され、うち抗うつ薬治療を受けていた群(抗うつ薬群)は57.6%、受けていなかった群(非抗うつ薬群)は42.4%で、抗うつ薬群で年齢が高かった(49.2歳 vs. 47.1歳、P<0.0001)。うつ病患者の67.9%が女性、32.1%が男性で、女性で抗うつ薬治療を受けていた患者の割合が高かった(60.6% vs. 51.5%、P<0.0001)。また、うつ病患者の88.9%が白人で、抗うつ薬治療を受けていた患者の割合は白人で59.1%と他の人種と比べて高かった(P<0.0001)。抗うつ薬治療を受けていた患者の割合は、ヒスパニック系に比べて非ヒスパニック系で高かった(52.4% vs. 58.5%、P<0.0001)。

 結婚状況については、結婚している割合が最も高く(47.6%)、次いで一度も結婚したことがない割合が多かった(23.3%)。一度も結婚したことがない群は他の群と比べ抗うつ薬治療を受ける割合が低かった。経済状況については、中等・高収入群の割合が最も多かった(62.9%)。医療保険加入状況については、ほとんどが営利保険に加入していた(64.4%)。抗うつ薬治療を受ける割合は、営利保険加入群(58.8%)、公的保険加入群(58.0%)に比べて保険未加入群(47.6%)で低かった。

 ベースライン時のMCSとPCSは、非抗うつ薬群に比べて抗うつ薬群で低かった。

抗うつ薬のHRQoL改善効果は持続しない

 2005~15年のデータを統合して抗うつ薬群と非抗うつ薬群のHRQoLを比較すると、抗うつ薬使用によってMCSの一部に改善が見られたが、PCSでは改善が見られなかった。

 単変量D-I-D分析の結果、抗うつ薬群と非抗うつ薬群でPCSの変化(-0.35 vs. -0.34、P=0.9595)とMCSの変化(1.28 vs. 1.13、P=0.5284)に有意差は認められなかった。多変量D-I-D分析で年齢、性、人種、民族、結婚状況、貧困状況、保険加入状況などについて調整した後も、抗うつ薬群と非抗うつ薬群でPCSの変化(-0.65 vs. -0.55、P=0.6405)とMCSの変化(1.18 vs. 0.93、P= 0.3191)に有意差は認められなかった。

 以上から、Almohammed氏らは「実世界において抗うつ薬の使用によるHRQoL改善効果は持続せず、HRQoLの変化は2年間抗うつ薬を服用したうつ病患者と、抗うつ薬を服用しなかった患者で有意差はなかった」と結論。「うつ病患者は抗うつ薬を使用し続ける必要があるため、うつ病患者のHRQoLに対する薬理学的/非薬理学的介入の実際の影響を評価する長期的な研究が必要だ。さらにうつ病患者の全体的なQOLを向上させるには、うつ病の長期的管理における認知的・行動的介入の役割を評価していく必要がある」と展望した。

(大江 円)