カルシウム(Ca)サプリメント(サプリ)は、大動脈弁狭窄症(AS)を有する高齢者の早期死亡に関連していることが示された。米・Cleveland Clinic FoundationのNicholas Kassis氏らは、ASを有する高齢者を対象にCaサプリの服用と死亡の関係を検討した結果を、Heart2022年4月25日オンライン版)に報告。「高齢の軽度~中等度AS患者において、ビタミンDの有無にかかわらずCaサプリの服用は死亡率および大動脈弁置換術(AVR)施行率の上昇と関連していた」と結論した。

60歳以上の軽度~中等度ASが対象

 Ca代謝不全と大動脈弁石灰化の関係が指摘され、心臓弁膜症の一種であるASの進行が骨リモデリングと骨形成の経路が類似しているにもかかわらず、Ca/ビタミンDサプリの大動脈弁に対する効果に関するデータは動物モデルや限られた対象のものしかなかった。また、CaおよびビタミンDが欠乏しやすく骨粗鬆症骨折リスクが高い高齢者、閉経後女性においてCa/ビタミンDサプリの使用が増えている中、サプリの長期的な安全性と血行力学的効果に関する研究はほとんどない。そこでKassis氏らは、軽度~中等度のAS患者を対象にCaおよびビタミンDサプリの単独使用または併用が全死亡、心血管(CV)死亡、非CV死亡、AVR、ASの進行に及ぼす影響を検討する長期後ろ向き研究を行った。

 2008年1月~16年6月にCleveland Clinic Echocardiography Databaseに登録された60歳以上で軽度~中等度のAS〔大動脈弁口面積(AVA)1.0cm2以上2.0 cm2未満〕患者2,657例(平均年齢74.3歳、女性42.4%)を抽出。サプリ服用の有無で①サプリなし群、②ビタミンD単独群(ビタミンDサプリのみを服用)、③Ca±ビタミンD群(CaサプリのみまたはCaサプリとビタミンDサプリを併用)―に分類。2018年12月まで追跡し、サプリとAS進行との関係を検討した。主要評価項目は全死亡、CV死亡、AVRの発生、副次評価項目はAVA、最大圧較差、平均圧較差で評価したASの進行とした。

 サプリなし群は1,292例(49%)、ビタミンD単独群は332例(12%)、Ca±ビタミンD群は1,033例(39%)。サプリ服用期間の中央値は、ビタミンD単独群が70カ月〔四分位範囲(IQR)49~101カ月〕、Ca±ビタミンD群が67カ月(同45~94カ月)だった。

 サプリなし群に比べサプリを服用していた群では、糖尿病、冠動脈疾患の割合が有意に多く、スタチン、ワルファリン、リン吸着薬を服用していた割合が有意に多かった(全てP<0.001)。

Ca±ビタミンDで全死亡リスク31%上昇

 中央値で69カ月の追跡期間中に540例が死亡(CV死150例、非CV死155例、死因不明235例)し、774例がAVRを施行。各群の3分の1以上が重度の大動脈狭窄症に進展した。

 全死亡はサプリなし群の216例、Ca±ビタミンD群の257例、ビタミンD単独群の67例に認められ、1,000人・年当たりの全死亡率はそれぞれ26.0人、43.0人、32.4人、サプリなし群に対する全死亡率の上昇はCa±ビタミンD群で20人、ビタミンD単独群で9人だった(全てP<0.001)。

 1,000人・年当たりのCV死亡率は、サプリなし群が5.8人、Ca±ビタミンD群が13.7人、ビタミンD単独群が9.6人で、サプリなし群に対するCV死亡率の上昇はCa±ビタミンD群で7.9人、ビタミンD単独群で8.3人だった。

 1,000人・年当たりのAVR施行率はサプリなし群が17.7人、Ca±ビタミンD群が88.2人、ビタミンD単独群が57.8人で、サプリなし群に対するCa±ビタミンD群のAVR施行率の上昇は71人だった(P<0.001)。

 Cox回帰分析で年齢、性、併存症、服用薬剤、ベースライン時の心エコーデータ、クレアチニンHDLコレステロールLDLコレステロールの血中濃度などを調整したところ、サプリなし群に対しCa±ビタミンD群では全死亡リスクが31%有意に上昇し〔調整ハザード比(aHR)1.31、95%CI 1.07 ~1.62、P=0.009〕、CV死亡リスクが2倍に(同2.00 、1.31~3.07、P=0.001)、AVR施行リスクが48%(同1.48、1.24~1.78、P<0.001)いずれも有意に上昇した。

 サプリなし群に対しCaサプリのみを服用した群(115例)では全死亡リスクは同等だったが(aHR 1.24、95%CI 0.77 ~1.99、P=0.38)だったが、AVR施行リスクが約3倍に上昇した(同2.7、1.76~4.08、P<0.001)。

 多変量長期線形混合効果回帰モデルによる解析の結果、AVR施行の有無にかかわらずCa/ビタミンDサプリも重度のASへの進展との関連は認められなかった。

 以上から、Kassis氏は「高齢の軽度~中等度AS患者において、ビタミンDの有無にかかわらずCaサプリの服用は死亡率およびAVR施行率の上昇と関連していた」と結論している。

 オーストリア・Medical University of ViennaのJutta Bergler-Klein氏は同誌の付随論評(2022年4月25日オンライン版)で「高齢者や併存症を有する患者の健康に資するという考えの基に、毎年ビタミンやミネラルのサプリに数十億ドルが使われてきた。しかし今回の研究結果から、医師は心疾患を有する骨粗鬆患者へのCaサプリに関して再考する必要がある。大動脈弁石灰化および心血管リスクが高い患者では必要でない限りCaサプリの長期使用は避けるべきであることが強く示唆された」と解説している。

(大江 円)