東京大学大学院糖尿病・生活習慣病予防講座特任准教授の山口聡子氏らは、国内26施設における2017年1月~20年11月の診療データを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行第一~二波(2020年1~11月)が他疾患の診療に及ぼした影響を俯瞰的に評価。その結果をBMJ Open2022; 12: e060390)に発表した。

78万5,495例が対象

 対象はメディカル・データ・ビジョン社の診療データベースのうち、匿名化された国内26施設を2017年1月~20年11月に受診した患者78万5,495例。2020年の月別の入院、外来、処方、処置などの件数をコロナ禍前(2019年または2017~19年の平均)と比較した。

 その結果、入院、外来ともに最も件数が減少していたのは2020年5月で、入院は27%、外来は22%減少しており、特に小児科ではそれぞれ65%、51%と大幅に減少していた。

小児科の入院・外来件数が著減も、化学療法や透析療法はほぼ影響なし

 疾患別では、2020年に呼吸器疾患による入院が最も減少しており、COVID-19を除いた16歳未満の肺炎は94%、16歳以上の肺炎は43%、気管支喘息はそれぞれ80%減少した。胆石症や狭心症などについては、予定外入院に比べて予定入院が大きく減少しており、相対的に緊急性の低い検査や治療が延期された可能性が考えられる。内視鏡検査や外来リハビリテーションも30%以上の減少が認められた。

 一方で、外来化学療法や血液透析治療についてはほとんど影響が見られなかった(それぞれ9%と5%の減少)。糖尿病などの慢性疾患の処方については、処方頻度が低下した一方で1回当たりの処方日数は増加していた。

 疾患別の入院については、2020年1~11月の退院件数を2019年の同月と比較。呼吸器疾患による入院は2020年5月に55%減少し、11月まで低い水準で推移した。同様に、2020年5月には循環器疾患で32%、消化器疾患で25%の減少が見られた()。

図. 疾患別に見たコロナ禍前後における入院件数の変化率(2019年と2020年で比較)

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(東京大学プレスリリースより引用)

 山口氏らは「コロナ禍は他疾患の診療にも広範囲かつ多大な影響を及ぼしたことが分かった」と結論。「より詳細に調査することで、他疾患の診断や治療の遅れを防ぐことにつながる」と考察した。今後は2020年12月以降の影響についても評価していくという。

(小野寺尊允)