突発性感音性難聴(SSNHL)の発症原因はよく分かっていないが、感染症の関与が指摘されている。米・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのThomas Yen-Ting Chen氏らは、台湾のコホート研究でヒトパピローマウイルス(HPV)感染の有無別にSSNHL発症リスクを検討。HPV感染例でSSNHL発症リスクが高かったことをEClnicalMedicaine2022; 47: 101402)に発表した。

台湾のHPV感染者5万例が対象

 今回の研究では、台湾の国民健康保険のデータベース(NHIRD)に2000年1月1日~2012年12月31日に登録された医療記録から、HPV感染と診断された4万9,247例(HPV群)および傾向スコアで年齢、性、登録年などをマッチングさせた9万8,494例(対照群)を1:2で抽出した。なお、登録期間以前にSSNHLの既往がある例、連続的に難聴を有している例、聴神経鞘腫やメニエール病、外傷性脳損傷例などは除外した。

 主要評価項目として、①初回のSSNHL診断、②死亡、③国民健康保険からの脱退-のいずれか発生、または2013年末まで追跡した。

 誤診を防ぐため、SSNHLの発症は耳鼻咽喉科医の厳格な診断に基づき、入院または、3回以上外来受診した者と定義した。

 ベースライン時の患者背景は平均年齢が33歳、男性が約51%などだった。

心血管疾患併存でSSNHLリスク4.6倍

 解析の結果、SSNHLの累積発症率は、対照群と比べHPV群で有意に高かった(Log rank検定、P=0.003)。1万人・年当たりのSSNHL発症率は、対照群の2.18に対しHPV群では3.24、Coxフレイルティモデルにより年齢や性、併存症などを調整したハザード比(aHR)は1.37(95%CI 1.07~1.74)と、HPV群で有意にリスクが高かった(P=0.011)。HPVのタイプ別に見ると、粘膜・性器型(Mucosal type)では有意差が消失していた一方で、皮膚型(Cutaneous type)では、SSNHLリスクがより高まっていた(aHR 1.96 95%CI 1.36~2.83、P<0.001)。

 変数の有無別に両群の発症リスクを見ると、年齢や性、併存症の有無と関係なくおおむねHPV群で高い傾向にあり、有意差が認められたものとして年齢40~60歳(aHR 1.50、95%CI 1.03~2.20、P=0.037)、女性(同1.48、1.05~2.09、P=0.027)、高血圧併存(同1.79、1.15~2.78、P=0.010)、糖尿病併存(同2.11、1.18~3.78、P=0.012)、脂質異常症併存(同1.84、1.14~2.95、P=0.012)、冠動脈疾患なし(同1.31、1.01~1.70、P=0.046)、慢性閉塞性肺疾患なし(同1.32、1.01~1.72、P=0.040)、B型肝炎ウイルス感染なし(同1.40、1.09~1.79、P=0.009)、単純ヘルペスウイルス感染なし(同1.30 、1.01~1.68、P=0.040)などが挙げられた。とりわけ脳血管疾患併存例でリスクが高かった(同4.59、1.47~14.3、P=0.009)。

 Chen氏は「今回の解析では、HPV感染はSSNHLのリスク上昇と関連していた。今後、SSNHL発症のメカニズム解明と、SSNHL抑制に関連する因子を明らかにするためさらなる研究が必要」と述べている。

(編集部)