スウェーデン・Karolinska InstitutetのZhebin Yu氏らは、同国の若年成人を対象に短期間の大気汚染曝露と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染との関連を検討。曝露レベルが比較的低いにもかかわらずSARS-CoV-2感染リスクが増加したことをJAMA Netw Open2022;5: e228109)に報告した。

ケース・クロスオーバーデザインで個人レベルの影響を検討

 大気汚染曝露と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連について、集団を単位とした生態学的研究によるエビデンスが蓄積されつつあるが、集団単位の研究結果が個人単位では認められないことも多い(生態学的誤謬)。

 個人レベルでの関連は検討されておらず、特に若年者における汚染物質への短期曝露の影響については不明点が多い。

 Yu氏らは、スウェーデンの前向き出生コホート研究BAMSEと同国の感染症登録のデータを結合し、若年成人における短期の大気汚染曝露とSARS-CoV-2感染との関連を検討する時間層別化ケース・クロスオーバー研究を実施した。

 2020年5月5日~21年3月31日におけるSARS-CoV-2のPCR検査陽性者を特定し、検査実施日を発症日、同年同月の別の週の同じ曜日を対照日とした。大気汚染に関しては、ガウス型拡散式に風の影響を考慮した時空間解像度の高いモデルを用い、居住地の毎日の大気汚染レベル〔微小粒子状物質(PM)2.5、PM10、ブラックカーボン(BC)、窒素酸化物(NOx)の4種〕を調べた。

 評価項目はSARS-CoV-2感染とし、条件付きロジスティック回帰モデルに分布ラグ・モデルを併用して、短期の大気汚染曝露との関連を検討した。

PM、BC曝露濃度の上昇で感染率は6~7%程度上昇

 対象はSARS-CoV-2感染者425例で、女性が53.9%、年齢中央値は25.6歳〔四分位範囲(IQR)24.9~26.3歳〕だった。

 汚染物質の濃度(中央値)は4物質とも対照日と比べ発症日で若干高かった。PM2.5は対照日の3.8μg/m3(IQR 2.4~5.9μg/m3)に対して発症日では4.4μg/m3(同2.6~6.8μg/m3)、PM10はそれぞれ 6.6μg/m3(同4.5~10.4μg/m3)、7.7μg/m3(同4.6~11.3μg/m3)、BCは0.2μg/m3(同0.2~0.4μg/m3)、0.3μg/m3(同0.2~0.5μg/m3)、NOxは7.7μg/m3(同5.3~12.8μg/m3)、8.2μg/m3(同5.6~14.1μg/m3)だった。

 PM2.5とPM10については検査実施2日前における曝露濃度の上昇が感染リスク増大と関連しており、曝露濃度の上昇に伴いそれぞれ6.8%(95%CI 2.1~11.8%)、6.9%(同 2.0~12.1%)リスクが増大した。

 BCについても検査実施1日前における曝露濃度の上昇が感染リスク増大と関連しており、曝露濃度の上昇に伴い5.8%(同 0.3~11.6%)リスクが増大した。NOxではこうした関連は認められなかった。

 また、これらの関連は、性、喫煙、喘息、肥満、COVID-19呼吸器症状を調整後も維持された。

 Yu氏らは「今回の知見は、PMおよびBCへの短期曝露がSARS-CoV-2に対するPCR検査結果陽性リスクの上昇と関連することを示唆しており、環境中の大気汚染レベルを下げることが、幅広い公衆衛生上のベネフィットに結び付くことを支持するものだ」と結論している。

(小路浩史)