ストーカー対策で、精神的な治療のため警察が医療機関での受診を働き掛けた加害者が昨年は前年比111人増の993人で過去最多となったことが7日、警察庁への取材で分かった。実際に受診した人は16%の164人にとどまっており、専門家は「司法と医療が共同で加害者の治療に取り組む新制度が必要だ」と指摘している。
 ストーカー加害者には、被害者に執着するといった思考の偏りや感情をコントロールできないなどの特徴があり、精神医学的なアプローチで治療やカウンセリングを実施するプログラムが注目されている。
 警察は2016年から、連携する医療機関での受診を加害者に働き掛ける取り組みを開始。対象者は19年が822人、20年は882人と年々増加している。
 ただ、働き掛けに強制力はなく、実際に受診したのは19年が124人、20年も124人で、受診率は15%前後にとどまる。「自分には必要ない」と考える他、費用が自己負担のため拒むケースがあるという。
 京都府警は被害者だけでなく加害者も相談できる専用窓口を設け、カウンセリング費用を公費で負担する仕組みも整備した。ただ、こうした支援策は地域差があるのが実情だ。警察庁は今年度、連携する一部の医療機関や都道府県の福祉部門などへの聞き取り調査を実施し、改善点を明らかにすることで全国でのより効果的な取り組みを目指す。
 元家庭裁判所調査官で、ストーカー問題に詳しい立命館大総合心理学部の広井亮一教授は、心理学などの専門的な知見を持つ調査官と裁判官が連携して事に当たる家庭裁判所のような新たな制度が必要だと指摘。実現には課題が多いとした上で、「警察官を含めた司法関係者と、精神科医や臨床心理士らがチームを組んでストーカー加害者の治療を行うべきだ」と話した。 (C)時事通信社