日本外科学会によると、若手外科医の確保は外科医療を遅滞・衰退させないために、最重要課題といっても過言ではないという。しかし今年(2022年)の外科専攻医採用者数は852人と昨年より52人減少した。同学会は、外科志望者数が伸び悩んでいる現状について再考し、4月27日に公式サイトに見解として公表した。

主な理由は勤務時間が長いなど5点

 2018年に始まった新専門医制度において、外科専攻医採用者数はわずかながら増加傾向にあったが、昨年の904人から今年は852人に減少した。さらに、専攻医全体に占める割合も9.8%から9.0%に低下した。 日本外科学会はこれまで実施したさまざまなアンケート結果から、外科志望者の減少理由として次を挙げている。

  1. 外科専門医資格を取得するのに時間を要し、生涯労働期間が短い
  2. 勤務時間が長い(ワークライフバランスが十分に考慮されていない)
  3. 給与が勤務量に見合っていない
  4. 医療訴訟のリスクが高い
  5. 女性医師への配慮が乏しい

 こうした状況に鑑み、同学会は課題の解決に積極的に取り組んできた。例えば①については、まず基本領域として3年間の外科専門研修を行い、次にサブスペシャルティ領域の連動研修を受けることで、内分泌外科領域を除き他領域とほぼ同期間に専門医資格が取得できるようにした。

 さらに生涯労働期間が短い点に関しては、内視鏡手術やロボット手術の普及により、外科医の労働期間が延伸すると予想されている。仮に手術を担当しなくなったとしても、外科医は全身を俯瞰的に観ることができるため総合医としての需要が高い可能性を示している。

病院長の強いリーダーシップで増収分を外科医のインセンティブに

 医師の働き方改革については、2024年から医療機関に法的規制が課せられる。特に外科医は過重労働となる割合が高いことから、②の勤務時間が長いという点について労働環境の大幅な改善が見込まれる。

 ただし、実現に際しては適切な労働時間の管理、意識改革、タスクシフトの推進などの課題が残る。同学会としては、特にタスクシフトの推進に向け、厚生労働省と協力し具体的かつ適切な提言を今後も行うとしている。

 ③の給与が勤務量に見合っていないという点に関しては、外科医にインセンティブを付与する目的で診療報酬の大幅改定がなされた。しかし、医療機関の多くが増収分を経営赤字の補填に充てているという。そのため同学会は、外科医へのインセンティブという本来の目的に使用するべく、病院長の強いリーダーシップへの期待感を示した。

 ④の訴訟リスクが高いことへの対応策として同学会は、外科医療補償制度(無過失補償制度)を策定すべく厚労省に働きかけている。

女性医師対策は緊急課題と認識

 また⑤の女性医師への配慮が乏しいという問題については現在、女性会員比率が10.3%の同学会では、女性医師の労働環境の改善やキャリア形成の支援は重要かつ緊急性の高い課題と認識しているという。女性理事の登用に加え、あらゆる面で男女共同参画の推進も企画している。特に、女性医師が出産後に復職する際の技術指導を行う仕組みづくりが必要としている。

 同学会は、外科医師としての出発点から生涯にわたり伴走する役目を担っており、若い世代の「学びやすさ・働きやすさ」を重視し、多くの若手医師が外科学に目を向けられるように同学会会員にさらなる支援を呼びかけている。

(田上玲子)