妊娠高血圧症候群(HDP)の妊婦は正常血圧の妊婦に比べ、心血管疾患(CVD)リスクが63%高く、その64%は妊娠後に生じたCVD危険因子の間接効果によることが示された。米・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical SchoolのJennifer J. Stuart氏らは、初産を経験した女性6万人を30年以上追跡した結果をJ Am Coll Cardiol2022; 79: 1901-1913)に発表。「HDP既往歴を有する女性では、妊娠後の高血圧、高コレステロール血症、2型糖尿病、過体重/肥満のスクリーニングがCVD予防に有用かもしれない」と指摘した。

約10%がHDPを経験

 妊娠高血圧や妊娠高血圧腎症などのHDPはCVD危険因子として知られているが、HDPとCVDの関係にCVD危険因子がどの程度関与しているかは明らかでなかった。そこでStuart氏らは、初産を経験した女性を30年以上追跡してこれらの関係を検討した。

 同氏らは、1989年にNurses' Health Study(NHS)Ⅱに参加し2009年の隔年調査票に回答したCVDがない初産を経験した女性6万739人をCVD発症または2017年まで追跡。Cox比例ハザードモデルを用いて交絡因子を調整、HDPとCVDの関係を検討した。解析には1989年以前の初産も含めた。

 初産は1964~2008年、平均27.0歳時に発生した。対象のうち正常血圧者が5万4,756例(90.7%)、HDPが5,623例〔9.3%;妊娠高血圧1,789例(3.0%)、妊娠高血圧腎症3,834例(6.4%)〕で、約10%がHDPを経験していた。

 初産時から中央値で34年〔四分位範囲(IQR)29~40年、範囲2~54歳〕の追跡期間中に、1,789例(1.8%)がCVD(心筋梗塞554例、致死的冠動脈疾患6例、脳卒中515例;1例は心筋梗塞と脳卒中を併発)を発症した。CVD発症時の年齢は中央値で61歳(IQR 57~64歳、範囲33~71歳)だった。

CVDリスクは妊娠高血圧で41%、妊娠高血圧腎症で72%上昇

 Cox比例ハザードモデルを用いて妊娠時BMI、妊娠時喫煙状況、親のCVD歴などの交絡因子を調整したところ、妊娠時正常血圧に対しHDPではCVDリスクが63%上昇した〔ハザード比(HR)1.63、95%CI 1.39~1.92〕。CVDリスクは妊娠高血圧で41%(同1.41、1.03~1.93)、妊娠高血圧腎症で72%(同1.72、1.42~2.10)上昇し、妊娠高血圧よりも妊娠高血圧腎症でリスクが高かった。

CVD危険因子の間接効果は大きい

 HDP関連CVDにおける妊娠後生じたCVD危険因子の間接効果を見ると、初産時HDP関連CVDの63.8%(95%CI 38.6~83.2%)、妊娠高血圧腎症関連CVDの57.3%(同24.2~84.9%)、妊娠高血圧関連CVDの83.8%(同3.6~99.9%、全てP<0.0001)が妊娠後に生じた慢性高血圧、高コレステロール血症、2型糖尿病、BMIの変化の間接効果によるものだった。

 以上から、Stuart氏は「HDPの妊婦は正常血圧の妊婦に比べ、その後のCVDリスクが63%上昇した。妊娠高血圧によって上昇したCVDリスクの84%、妊娠高血圧腎症によって上昇したCVDリスクの57%は妊娠後に生じたCVD危険因子の間接効果によるものだった」と結論。「HDP既往歴を有する女性のCVD予防には、妊娠後の高血圧、高コレステロール血症、2型糖尿病、過体重/肥満のスクリーニングが有用である可能性が示された」と述べている。

(大江 円)