勃起障害(ED)は糖尿病患者に高頻度に見られる合併症で、糖尿病の男性におけるED有病率は非糖尿病男性と比べて約3.5倍との報告もある。韓国・Hanyang University Myongji HospitalのMin-Kyung Lee氏らは、EDや前立腺肥大症に伴う排尿障害などの治療薬として使用されているホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬タダラフィルの低用量投与が、EDを合併する2型糖尿病患者の血糖管理を改善したとする予備的なランダム化比較試験(RCT)の結果をDiabetol Metab Syndr2022; 14: 56)に発表した。

1日1回5mgを6カ月間投与

 勃起には一酸化窒素(NO)が重要な役割を果たしているが、糖尿病患者ではNOの産生量が低下し、EDが引き起こされやすい状態となることが知られている。

 PDE5阻害薬では海綿体における環状グアノシンーリン酸(cGMP)の加水分解を阻害することによってNOを介した平滑筋の弛緩を促し、陰茎への血流を増加させて勃起を起こす作用があると考えられている。また、これまでにPDE5阻害薬の投与によるNO増加が確認されている他、2型糖尿病患者のEDに対するPDE5阻害薬が有益な影響をもたらすとの探索的研究の結果も報告されている。さらに、2型糖尿病患者におけるPDE5阻害薬の常用が血管内皮機能の改善に有効であることがメタ解析で示されており、タダラフィルの常用が血糖管理に有用であることが複数の予備的研究で示唆されている。

 そこでLee氏らは今回、2型糖尿病とEDを有する患者を対象とした二重盲検プラセボ対照RCTを実施し、低用量タダラフィル(1日1回5mg)が血糖管理に及ぼす影響などについて検討した。

 同試験では、2017年1月~18年11月に同院の外来クリニックで①性的パートナーがいる、②過去1カ月間に1回以上の性交の機会があった、③2型糖尿病とEDの罹病期間が1年超、④HbA1c値が9%未満、⑤過去3カ月間にPDE5阻害薬の使用歴がない-の条件を満たす35~75歳の男性患者75例を登録。6カ月間にわたり低用量タダラフィルを投与する群(タダラフィル群、50例)とプラセボ群(25例)に2:1でランダムに割り付けた。

 両群の主な背景は、平均年齢がタダラフィル群61.8歳、プラセボ群58.9歳、国際勃起機能(IIEF)-5の平均スコアがそれぞれ10.47、9.57、平均BMIが25.5、26.6、平均HbA1cが6.83%、6.77%、平均空腹時血糖(FPG)が128.0mg/dL、120.7mg/dLなどで有意差はなかった。

 主要評価項目はベースラインからのHbA1c値の絶対変化量、副次評価項目は代謝パラメータと勃起機能とした。

HbA1c値やFPG値が有意に改善  

 解析は試験を完遂した68例(タダラフィル群45例、プラセボ群23例)を対象に実施した。その結果、6カ月後におけるHbA1c値の絶対変化量はプラセボ群の0.196±0.691%に対してタダラフィル群では-0.137±0.528%と、有意な群間差が認められた(P=0.030)。また、IIEF-5の平均スコアも試験開始時には有意な群間差はなかったが、6カ月後にはプラセボ群の2.22±5.73に対してタダラフィル群では6.56±5.32と有意な改善が認められた(P=0.003)。  

 代謝パラメータに関しては、HOMA-IR、ウエスト周囲長、BMI、血圧に有意な群間差は認められなかったものの、6カ月後におけるFPG値のベースラインからの変化量はプラセボ群の5.35±17.77mg/dLに対してタダラフィル群では-6.40±28.53mg/dLと有意な改善が認められた(P=0.046)。  

 Lee氏らは、今回のRCTの限界として①サンプルサイズが小さい、②生活習慣などの交絡因子を調整していない、③結果の背景にある機序は明らかにできていない―ことなどを挙げた。その上で、「低用量タダラフィルは2型糖尿病とEDを有する患者の血糖管理を効果的かつ安全に改善する可能性がある」と結論。大規模RCTによって機序を解明し、タダラフィルが血糖管理に及ぼす影響を明確に示すた必要があると付言している。

(岬りり子)