米・Eisai社/カナダ・McGill UniversityのAmir Abbas Tahami Monfared氏らは、早期アルツハイマー病(AD)に対する抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabの有効性と安全性を評価した第Ⅱb相試験(Study 201)に基づく長期健康アウトカムのシミュレーション結果をNeurol Ther2022年4月25日オンライン版)に発表した。標準治療単独に比べてlecanemab追加により病態進行が遅くなり、軽度認知障害(MCI)および軽度ADの状態にとどまる期間が延長し、施設入所リスクが低下する可能性が示された。

ADNI研究データを用いたシミュレーションモデル

 第Ⅱb相試験Study 201では、Aβ陽性の早期AD(MCIおよび軽度AD)患者856例を対象にlecanemab(10mg/kg隔週投与)の有効性と安全性をプラセボと比較。12カ月の投与で主要評価項目は達成されなかったものの、18カ月投与後にはプラセボに比べて有意な脳内Aβ蓄積量の減少およびADの進行抑制が示されていた。

 Tahami Monfared氏らは今回、Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究の長期観察データに基づく予測式を用いた疾患シミュレーションモデル(AD ACEモデル)により、早期AD患者の健康アウトカムを標準治療単独群とlecanemab追加群で比較した。

中等度AD進行が13%減少、3.13年遅延、高度ADは10%減少、2.34年遅延

 その結果、標準治療単独群に比べ、lecanemab追加群ではベースラインの状態から軽度AD、中等度AD、高度ADへ進行する患者の割合が7%ポイント(標準治療単独群92% vs. lecanemab追加群85%)、13%ポイント(61% vs. 48%)、10%ポイント(36% vs. 26%)減少。これらの状態へ進行するまでの平均期間が2.51年(3.10年 vs. 5.61年)、3.13年(6.14年 vs. 9.27年)、2.34年(9.07年 vs. 11.41年)延長すると予測された。

 また標準治療単独群に比べ、lecanemab追加群では施設入所の生涯発生率が6%ポイント(31% vs. 25%)低下、施設入所までの平均期間が0.74年(6.96年 vs. 7.70年)延長すると予測された。

 lecanemab追加による増分生存年は0.73(6.38 vs. 7.11)、増分質調整生存年(QALY)は0.75(4.22 vs. 4.97)、介護者のQALY損失は-0.03(0.21 vs. 0.18)と予測された。

MCI段階からの投与開始で抑制効果増

 サブグループ解析では、より若年のMCIの段階からlecanemab投与を開始した方が進行抑制効果は大きかった。

 MCI患者のサブグループでは、lecanemab追加により軽度ADへの進行が平均で2.53年(全体の解析結果では2.51年)、中等度ADへの進行が3.34年(同3.13年)遅延し、増分QALYは0.82(同0.75)と推定された。一方、軽度AD患者のサブグループではlecanemab追加による増分QALYが0.36にすぎなかった。

 以上を踏まえ、Tahami Monfared氏らは「lecanemabが早期AD患者の病態進行を抑制し、施設入所リスクを低下させる可能性が示された。今回の健康アウトカムの予測結果は、医療の意思決定者が早期AD患者に対するlecanemabの臨床的・社会経済的有用性を理解するためのよりどころとなるものである」と結論している。

太田敦子