【台北時事】新型コロナウイルス対策の「優等生」と称される台湾で、オミクロン株の感染拡大が続いている。域内で新たに確認された1日当たりの感染者数が4月28日に初めて1万人を超えてから、2週間後の今月12日には約6万5000人に急増。上海でロックダウン(都市封鎖)を続ける中国と対照的に隔離措置を緩和した蔡英文政権のコロナ対策が、狙い通り経済活動と感染防止を両立できるか、正念場を迎えている。
 台湾でオミクロン株が拡大し始めたのは3月下旬。蔡政権は281人の新規感染者が確認された4月6日、感染者や接触者の隔離を徹底する「ゼロコロナ」から重症化の抑制へと対策を移行した。
 台湾のコロナ対策に関する著書がある藤重太氏は、蔡氏が早期に対策を移行した背景について、「台湾はもともと、重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の経験から感染症の完全封じ込めは不可能に近いと認識しており、ゼロコロナは『減災』の第一手段にすぎなかった」と解説する。
 蔡総統は対策の移行に際し、感染力が強いものの軽症や無症状が多いオミクロン株には「重症者をゼロにし、軽症者をコントロールする」対策が適していると説明。隔離措置の緩和に伴う感染者数の増加に慌てないよう呼び掛けた。
 中央感染症指揮センターも、1日当たりの新規感染者が最高20万人に達する可能性をあらかじめ公表。流行のピークは5月下旬~6月上旬で、7月には減少すると見通しを示した。
 ただ、街中では外食や買い物客の減少、登校停止など目に見えて感染拡大の影響が広がっている。蔡氏がゼロを目指すと宣言した重症者数は5月14日時点で、死亡者196人を含め今年累計で269人に上った。
 蔡政権は隔離措置の緩和に加え家庭用抗原検査キットの普及など、医療現場の逼迫(ひっぱく)を回避する対策を打ち出したが、メディアや野党は政策の遅れや不備を指摘し始めている。最大野党・国民党系のシンクタンクが13日に公表した世論調査では、50.3%が政府のコロナ対策は「不満」と回答、「満足」の43.2%を上回った。 (C)時事通信社