厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の『罹患後症状のマネジメント』を第1版としてまとめ、4月下旬に自治体や医療機関に周知した。昨年(2021年)12月に公開した『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント』(暫定版)を改訂したもので、最新の医学的・科学的知見に基づき、COVID-19患者の診療に携わるかかりつけ医などに対し、標準的な診療やケア、専門医・拠点病院の受診を勧める目安などを各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、神経、精神、痛み、皮膚)ごとに解説している。
患者自身が医療機関を求めて転々、懸念される症状の悪化
COVID-19罹患後に現れる罹患後症状(いわゆる後遺症または遷延症状)は、3カ月ほどで約3分の2は回復するが、不安が募るとさらに持続・悪化することがある。これらの悩みや不安を抱える患者に対する診療とケアの手順は日本では標準化されていない。そのため、医療者側も悩み「気のせい」と患者に伝えたり、「自分の施設では診られない」と診療を拒む、あるいは患者自身が医療機関を求めて転々とし、さらに症状が悪化するなど悪循環を招くことが懸念されるようになっているという。
罹患後症状は多くの場合、かかりつけ医と専門医とが連携して対応できるものと考えられるため、全ての医師、医療従事者を対象とし、さらに長期的なケアには多職種の連携も重要となるため、多様な関係者に参考になるような内容を盛り込んでいる。
今回の改訂では、神経症状と精神症状をそれぞれ別の章とし、皮膚症状の章を新設した。可能な限り、根拠となる文献も多用した。
7つの症状に分類し解説、リハビリや職場復帰支援の方法も
同書では、罹患後症状(post COVID-19 condition)について、世界保健機関(WHO)の定義を紹介。「COVID-19に罹患した人に見られ、少なくとも2カ月以上持続し、また他の疾患による症状として説明がつかないものである。通常はCOVID-19の発症から3カ月経った時点にも見られる。急性期からの回復後に新たに出現する症状と、急性期から持続する症状がある。症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもある」との記載がある。
代表的な罹患後症状として、倦怠感・疲労感、関節痛、息切れ、記憶障害、集中力低下、不眠、嗅覚・味覚障害、睡眠障害などを挙げ(表)、これらを7つの症状に分類(呼吸器症状、循環器症状、嗅覚・味覚症状、神経症状、精神症状、痛み、皮膚症状)。国内外の最新の研究結果などの知見を基に、症状ごとにアプローチや専門医・拠点病院への紹介の目安などを解説している。さらに、小児の章がある他、リハビリテーションや職場復帰支援の方法としての産業医学的アプローチも盛り込まれている。
表. 代表的な罹患後症状
一方、罹患後症状に関しては「まだ不明な点は多い」「時間経過とともに発現率が低下する傾向がある」とし、一部残存した罹患後症状がさらに長期の経過でどのように推移するかや、感染株の違いによる影響については「今後の検討課題」と指摘している。
『罹患後症状のマネジメント』は、随時新たな知見などを取り入れ、改訂を継続していくという。
(小沼紀子)