うつ病患者では、気分の落ち込みに加えて、集中力や思考力の低下、物忘れといった認知機能障害が生じる場合がある。米・Duke UniversityのRichard S.E. Keefe氏らは、うつ病患者の認知機能障害に対するビデオゲームを用いたデジタル治療介入の有効性と安全性を検討し、結果をAm J Psychiatry2022年4月12日オンライン版)に報告した。

自宅でのデジタル治療介入を6週間実施

 うつ病患者では集中力、判断力、思考力の低下や物忘れといった認知機能障害が生じる場合があり、日常生活に深刻な影響を及ぼす。また、多くのうつ病症例で抗うつ薬による効果が現れた後も、認知機能障害が残るという。そこでKeefe氏らは、注意制御に関わる前頭-頭頂ネットワークを刺激する目的で開発されたビデオゲームを用いたデジタル治療AKL-T03介入プログラムの有効性と安全性を二重盲検ランダム化比較試験で検討した。

 対象は、抗うつ薬を8週以上服用し、軽度〜中等度の認知機能障害を有する25〜55歳のうつ病患者74例。ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)17項目が14〜22点(中等症〜重症)、認知機能簡易評価尺度における符号課題(symbol coding)Tスコアが50点未満などを組み入れ条件とした。対象を、AKL-T03群(37例)と頭字語ビデオゲームによるデジタル制御介入を行う対照群(37例)にランダムに割り付け、自宅で6週間のプログラムを実施した。

 両群の主な背景は、平均年齢がAKL-T03群43.11歳、対照群41.24歳、女性がそれぞれ62%、65%、HAM-D平均スコアが17.0点、18.6点、符号課題平均Tスコアが46.51点、44.14点だった。

 主要評価項目は持続的注意の改善とし、介入前およびプログラム終了時に注意変数試験(TOVA)を実施して評価した。

AKL-T03群で持続的注意および認知機能全般が改善

 解析の結果、対照群に比べAKL-T03群で持続的注意における中程度の効果サイズの有意な改善が認められた(P=0.005、偏η2=0.11、効果の大きさ中等度)。全ての認知機能評価尺度の複合スコアにおいても、同様の結果が示された。

 一方、符号課題平均Tスコアなどの副次評価項目では両群に差は見られなかったものの、改善効果を示すスコア変化量はAKL-T03群で一貫して大きかった。なお安全性について重篤な有害事象は確認されず、AKL-T03群で治療関連有害事象として頭痛が2例(5.5%)に認められた。

 以上から、Keefe氏らは「AKL-T03による治療介入は持続的注意を改善させ、認知機能全般にも好影響を及ぼすことが示唆された。うつ病患者の認知機能障害治療に有効かつ安全である」と結論。「さらなる検証により臨床現場への応用を検討したい」と付言している。

松浦庸夫