カナダ・メディカゴ社(田辺三菱製薬の子会社)のKaren J. Hager氏らは、同社と英・グラクソ・スミスクライン(GSK)が共同開発した植物由来の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンCoVLP+AS03(商品名Covifenz)の第Ⅲ相国際プラセボ対照ランダム化比較試験の結果をN Engl J Med(2022年5月4日オンライン版)に発表した。同ワクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症に対し69.5%、中等症~重症COVID-19に対し78.8%の抑制効果を示した。なお、全例が野生株ではなく変異株によるものだった。
ウイルス量はプラセボ群の100分の1以下
CoVLP+AS03は、SARS-CoV-2野生株のスパイク蛋白質を発現する植物由来のコロナウイルス様粒子(CoVLP)に、インフルエンザワクチンなどで使用実績があるGSKのアジュバント(AS03)を添加したもの。試験では、SARS-CoV-2ワクチン接種歴およびCOVID-19確定診断歴がない18歳以上の成人2万4,141例(年齢中央値29歳、男性50.9%)を登録し、21日間隔でCoVLP+AS03ワクチン(CoVLP 3.75μgにアジュバントAS03添加)を2回筋肉内接種する群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けた。
有効性の主要評価項目はワクチン2回目接種後7日目以降のCOVID-19発症予防とし、少なくとも160例がCOVID-19と確定診断された後に解析を行うこととした。
その結果、COVID-19と確定診断されたのは165例で、内訳はワクチン群40例(0.025人・年、95%CI 0.018~0.033人・年)、プラセボ群125例(0.080人・年、同0.068~0.096人・年)だった。
全体で、COVID-19発症に対する有効性は69.5%(95%CI 56.7~78.8%)、中等症~重症COVID-19に対する有効性は78.8%(95%CI 55.8~90.8%)だった。
また、ワクチン群のブレークスルー感染症例におけるCOVID-19診断時の平均ウイルス量(log10コピー数/mL)は、プラセボ群の100分の1以下だった(ワクチン群3.46 vs. プラセボ群5.65)。
副反応は大半が軽度~中等度で一過性
安全性プロファイルはこれまでの報告と同等だった。事前に規定された(solicited)副反応は大半が軽度~中等度で一過性だった。発現率は局所性副反応(ワクチン群92.3% vs. プラセボ群45.5%)、全身性副反応(同87.3% vs. 65.0%)ともにプラセボ群に比べてワクチン群で高かった。
自発報告された(unsolicited)副反応の発現率は、ワクチン群とプラセボ群でほぼ同等だった(2回目接種後21日目まで22.7% vs. 20.4%、43~201日目で4.2% vs. 4.0%)。
デルタ株で74.0%、ガンマ株で87.8%の有効性
今回、COVID-19確定診断例から検出されたSARS-CoV-2は全て変異株だった。試験期間中に優勢だったデルタ株(45.9%)とガンマ株(43.4%)に対するワクチンの有効性は、それぞれ74.0%(95%CI 51.7~86.8%)、87.8%(同73.0~95.3%)だった。
これらを踏まえ、Hager氏らは「CoVLP+AS03ワクチンは、SARS-CoV-2変異株によるCOVID-19の発症予防に有効である」と結論。「冷蔵(2~8℃)での保存が可能なため、僻地や低・中所得国で利用しやすい」と付言している。
(太田敦子)