今年度(2022年度)の診療報酬改定が4月1日から適用となった。外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は5月16日、第26回記者懇談会を開き、改定について見解を発表。また今回の改定では、ロボット支援手術の保険適用術式が拡大され、胃がん領域ではロボット支援手術時の診療報酬点数が加算されたことなどを踏まえ、各学会からロボット支援手術に関する意見も提示された。外保連実務委員長で東京大学病院長の瀬戸泰之氏の報告を中心に紹介する。

償還不可材料費が診療報酬点数を超える手術は微減

 今年度診療報酬の改定率については、全体ではプラス0.43%(前回は0.47%)、医師らの技術料や人件費に当たる本体部分はプラス0.23%となった。医科の改定率はプラス0.26%であり、前回(0.53%)に比べ半減した。今回の改定率について、瀬戸氏は「非常に厳しい改定であることは明らか」と指摘した。

 外保連が提出した82学会からの要望項目については、新設がほぼ例年通りの56/148件(37.8%、前回39%)であったのに対し、改正が53/212件(25%、前回41.8%)と前回に比べて改正された項目は大きく減少する結果となった。

 また償還不可診療材料費/診療報酬の比率が100%を超える術式(償還不可材料費が診療報酬点数を超える手術)は、前回の405件(12.9%)に対し今回は394件(12.4%)と若干減少した()。一方、同比率が50%以下の術式は、前回の2,126件(67.9%)から2,164件(68%)に件数としてはやや増加した。同氏は「いまだ厳しい状況であることは間違いない。外保連としてはこうした点を改定のたびに厚生労働省に訴えていきたい」と述べた。

図.償還不可診療材料費/診療報酬の比率

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 さらに勤務医の負担軽減の取り組みの推進として、外保連は手術および処置の時間外加算1(時間外加算1、休日加算1、深夜加算1)の要件について、施設基準の「当直医6人以上」の基準を緩和してほしいと診療報酬改定のたびに要望してきたが、受け入れられなかった。そこで外保連では今回あらためて、各施設の当直人数と緊急手術件数をNational Clinical Database(NCD)の過去3年間のデータを用いて突合した。その結果、当直医の配置が5人以下の施設は全体の3分の1を超えており(表1)、これらの施設で行われている緊急手術(全体の22.1~23.2%)が加算対象となっていない実状が明らかにされた(表2)。調査結果について、同氏は「この数値は、アンケートに回答した施設のみが対象なので、実際に加算対象となっていない施設や緊急手術の数はもっと多く、影響はより大きいと思われる」と考察した。

表1.配置される当直医が5人以下/6人以上の施設数の内訳

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表2.各施設で配置される当直人数と緊急手術/非緊急手術の症例数(外保連調査)

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(図、表1、2とも第26回外保連記者懇談会資料より引用)

 こうしたデータを示した上で、外保連は今年度診療報酬改定時にも「当直医6人以上」の基準緩和を強く求めた結果、時間外加算の要件として手術前日の当直回数に加え、連続当直の回数に係る上限(2日以上連続で夜勤時間帯に当直を行った日数)が追加された。また従来の診療科全体における当直回数から、医師1人当たりの当直回数(各医師について年間4日間以内、あるいは2日以上連続で当直を行った回数が年間4回以内)へと要件が変更された。この点ついて、同氏は「今回の要件の見直しによって、どれくらいの施設や外科医が恩恵を受けられるかは、今後検証が必要だと考えている。少なくとも、われわれが提示したデータが厚労省に考慮されたことになる」と述べた。

ロボット支援手術においては大きな意義

 瀬戸氏は、ロボット支援手術の適応拡大についても触れた。

 インテュイティブサージカル社の資料に基づき国内外におけるda Vinci手術件数の推移を比較すると、世界において2010~18年は順調に増加していたのが2019~20年のコロナ禍による停滞が見られる。一方、日本においては2010年から21年までコロナ禍の影響を受けずに増加し続けている。また2016年までは、国内におけるロボット手術件数の9割以上を泌尿器領域が占めていたが、その後にロボット手術の適応拡大が進んだことから、近年では消化器、婦人科、頭頸部、呼吸器領域などにおいても普及が見られる。

 そして今年4月に、ロボット支援下内視鏡手術の適応拡大がさらに進み、鏡視下咽頭悪性腫瘍手術、鏡視下喉頭悪性腫瘍手術、総胆管拡張症手術、肝切除術、結腸悪性腫瘍切除術、副腎摘出術、副腎髄質腫瘍摘出術(褐色細胞腫)、腎(尿管)悪性腫瘍手術が加わった。耳鼻科領域での承認は初となる。

 ロボット支援手術の課題としては、①厳しい施設・術者要件、②高額な費用(加算なし)、③限定された適用術式-が挙げられてきたが、今回の改定ではこれらの課題解決に大きな前進が見られた。食道がん、胃がん、直腸がんについては、内視鏡手術用支援機器を用いて手術を行った場合の施設基準が、NCDデータを活用したレジストリの解析結果に基づき見直された。すなわち、「術者として5例以上実施した経験を有する常勤医が1人以上配置」といった要件が削除された。

 さらに胃がんについては、ロボット支援手術の既存の腹腔鏡下手術に対する優越性が示されたことから評価が見直され、保険点数が加算された。

 これらを踏まえ、同氏は「今年度診療報酬改定は、ロボット支援手術においては大きな意義があるものとなった」と総括した。

泌尿器領域では数年で手術の大半がロボット手術に移行

 なお、最もロボット支援手術の普及が進む泌尿器科領域では、主要なロボット支援術式がほぼ保険適用されたことになる。記者懇談会で日本泌尿器科学会の立場として発表した神戸大学泌尿器科教授の藤澤正人氏は「ロボット手術は適応拡大により、今後さらに普及が加速するだろう。泌尿器科領域では、ほとんどの手術は数年でロボット手術に移行し、スタンダードな術式になる」と展望。また2020年8月に承認された国産初の内視鏡手術支援ロボット「hinotori」に関し、同大学では同年12月に第一症例(前立腺がん)を施行した。同氏はhinotoriについて、「現在は全国で20数台が導入済み。腎がんでも既に導入され、膀胱がんでも開始される予定だ。今後は海外展開も視野に入れて活動する」と紹介した。

(髙田あや)