横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻講師の金子惇氏らは、プライマリケアの質評価尺度(Person-Centered Primary Care Measure;PCPCM)の日本版を開発して、有用性を検証。既存の評価尺度と遜色ないことが確認されたとBMC Prim Care(2022; 23: 112)に発表した。

11項目の質問で簡潔にプライマリケアの質を評価

 プライマリケアは医療資源の有効利用や健康格差の是正の役割を担い、各国の医療システムにおいて重要な位置を占めている。扱う領域は発症前の健康相談、予防医療、患者だけでなくその家族や地域を対象とした健康に関する活動など幅広くカバーしている。

 このようなプライマリケアの質の評価法が全世界的に課題となる中で、患者中心のプライマリケア評価尺度であるPCPCMが米国で開発された。金子氏らは今回日本版PCPCMを開発、信頼性と妥当性を検証した。日本版PCPCMの特徴は、プライマリケアにおいて重要とされるケアへのアクセス、ケアの包括性や統合、調整、継続性、医療者と患者の関係性、アドボカシー、家族状況を考慮したケア、地域状況を考慮したケア、目標志向のケア、健康増進の11項目の質問(各4点満点)で簡潔に測定できることである()。

表. PCPCM日本版の概要 

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(横浜市立大学大学院プレスリリース)

日本はOECD加盟国35カ国中28位と低い

 研究では、20~74歳の横浜市在住者1,000人をランダムに抽出し質問紙を送付、403人から有効回答を得た。PCPCMの平均点は2.59点だった。経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国を対象として行われた先行研究のデータAnn Fam Med 2021; 19: 547-552と比較すると、上昇は見られたものの35カ国中28位と低かった。

 項目別に見ると、ケアへのアクセス2.98点、ケアの包括性2.91点、ケアの統合2.66点、ケアの調整2.56点、医療者と患者の関係性3.16点、ケアの継続性2.14点、アドボカシー2.48点、家族状況を考慮したケア2.18点、地域状況を考慮したケア2.12点、目標志向のケア2.57点、健康増進2.68点で、ケアの継続性、家族や地域の状況を考慮したケアの得点が低い傾向にあった。

 今回、PCPCMと同時に他のプライマリケア評価尺度Japanese version of Primary Care Assessment Toolの短縮版(JPCAT-SF)も用いて評価した。その結果、両者の相関係数は0.60と評価尺度としての信頼性・妥当性が示され、日本版として使用するのに十分なことが確認された。 

 金子氏は「PCPCMは比較的新しい評価尺度だが、今後世界中でプライマリケアの質評価に用いられる可能性が高く、他国との比較において日本のプライマリケアの特徴を記述する国際共同研究での利用も考えられる。少ない質問項目で多くの領域を評価できるので、国内の地域ごとの比較や日常診療の中での質改善にも有用」と述べている。

 なおPCPCMは、これまで米国の原著者らが翻訳した日本語版も存在したが、日本語表現が分かりにくい部分があり、日本で患者にインタビューを行い理解しやすさを確認した今回のものが正式なPCPCM日本版として原著者らのウェブサイトに掲載している。

(編集部)