イタリア・University of Ferrara Medical SchoolのAlberto Papi氏らは、吸入ステロイド薬(ICS)を含む維持療法を受けているがコントロール不良の中等症~重症喘息患者3,000例超を対象に、短時間作用型β2刺激薬(SABA)アルブテロール(サルブタモールの別名)/ICSブデソニド定量吸入の有効性と安全性をアルブテロール単独と比較する第Ⅲ相国際二重盲検ランダム化比較試験MANDELAを実施。その結果、アルブテロール/ブデソニド投与により喘息発作リスクが短期で26%、年間では25%低下したとN Engl J Med2022年5月15日オンライン版)に報告した。

レスキュー薬としての有効性を検討

 喘息症状の増悪に対しては、主にアルブテロールなどのSABAが用いられるが、根本的な気道炎症増悪に対する効果はほとんどなく、SABAへの過度の依存は喘息コントロール不良の一因となり、重度喘息増悪リスクを高めることが懸念される。

 これまでの研究で、発作時レスキュー治療としてのICS/長時間作用型β2刺激薬(LABA)配合剤の使用は、SABAと比ベさまざまな重症度の喘息患者において増悪リスクを有意に低減するというエビデンスがあり、Global Initiative for Asthma(GINA)や全米喘息教育・予防プログラムでは発作時のレスキュー薬として推奨している。しかし、中等症〜重症喘息患者におけるデータは、維持療法に用いている薬剤(ブデソニド/ホルモテロール)を必要に応じ同じ吸入器で使用した場合に限定されている。

 一方、アルブテロールは世界で最も頻用されているレスキュー薬であり、アルブテロールとブデソニドの組み合わせがレスキュー薬として最適である可能性が高い。

 そこでPapi氏らは、中等症~重症喘息患者のレスキュー薬としてのアルブテロール/ブデソニドの有効性および安全性をアルブテロール単独と比較する第Ⅲ相国際二重盲検ランダム化比較試験を実施した。

 対象は、2018年12月~21年7月に北米、南米、欧州、南アフリカの295施設で登録したICSを含む維持療法を受けているがコントロール不良の中等症~重症喘息患者3,132例(平均年齢49.4±16.4歳、12歳以上97%)。①アルブテロール180μgと高用量ブデソニド160μg(1回投与量それぞれ90μgと80μgを2回投与)の高用量群1,013例②アルブテロール180μgと低用量ブデソニド80μg(同90μgと40μgを2回投与)の低用量群1,054例③アルブテロール180μg(同90μgを2回投与)の単独群1,056例―に1:1:1でランダムに割り付けた。4~11歳の小児はICS高用量投与のリスクを回避するため、低用量群と単独群に割り付けた。試験は2~4週間のスクリーニング期、最低24週間の治療期と2週間の治療後追跡期で構成、データベースロックは2021年8月23日とした。

 有効性の主要評価項目は、intention-to-treat集団における生存期間解析による初回の喘息の重度増悪とし、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて年齢、地域、スクリーニング前12カ月間の重度増悪回数を調整しハザード比(HR)を算出した。副次評価項目は、重度増悪の年間発生率などとし、負の二項回帰モデルを用いて解析した。

重度増悪の年間発生率は高用量で25%、低用量で19%低下

 解析の結果、喘息の重度増悪リスクは単独群に対し高用量群で26%(HR0.74、95%CI 0.62~0.89、P=0.001)、低用量群では16%いずれも有意に低下した(同0.84、0.71~1.00、P=0.052)。

 重度増悪の年間発生率は、単独群に対し高用量群で25%低く〔0.58(95%CI 0.44~0.77)vs. 0.43(同0.33~0.58)、率比0.75(同0.61~0.91)〕、低用量群では19%低かった〔0.48(同0.37〜0.63)、率比0.81(同0.66〜0.98)〕。

 有害事象の発生率は3群とも同等で、アルブテロール/ブデソニドの安全性に問題は認められなかった。

 以上から、Papi氏は「コントロール不良の中等症〜重症の喘息患者において、アルブテロール/ブデソニドのレスキュー使用は、アルブテロール単独に比べて重度増悪のリスクを著しく低下させた」と結論。

 今回の結果について、共著者で米・Rutgers Robert Wood Johnson Medical School のReynold Panettieri Jr.氏は「喘息治療におけるパラダイムシフトを意味する」と述べている。

(今手麻衣)