新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの有効性は、オミクロン株では減弱し3回目接種(ブースター接種)により増強することが示されているが、小児でも同様かは不明である。米疾患対策センター(CDC)のKatherine E. Fleming-Dutra氏らは、オミクロン株流行期の小児・青年におけるSARS-CoV-2の症候性感染に対するファイザー製ワクチン・トジナメランの有効性を検討。結果をJAMA(2022年5月13日オンライン版)に報告した。
オミクロン株により小児・青年の感染例が増加
オミクロン株の出現以前、ランダム化比較試験により5〜15歳の小児および青年に対するトジナメラン2回接種の有効性が実証され、米食品医薬品局(FDA)は昨年(2021年)5月に12〜15歳、同年10月に5〜11歳に対するトジナメランの緊急使用許可を承認した。その後、トジナメランの経時的な有効性の減弱が報告され、成人は昨年11月に、12〜15歳は今年1月にブースター接種が承認された。
同時期にオミクロン株が出現し、5〜15歳での感染例や入院例が増大した。そのため、小児および青年でのオミクロン株流行期におけるトジナメランの有効性を評価し、これらの年齢層に対するSARS-CoV-2ワクチンの方針を定める必要に迫られた。
症例対照研究により有効性を推定
Fleming-Dutra氏らは、オミクロン株流行期の2021年12月26日〜22年2月21日に1つ以上の症状を呈する5〜15歳のPCR検査結果のデータを用いて検査陰性者を対照とした症例対照研究を実施。解析には5〜11歳の小児に対する7万4,208件および12〜15歳の青年に対する4万7,744件の検査データが用いられた。
陽性者は小児3万999例、青年2万2,273例、陰性者はそれぞれ4万3,209例、2万5,471例だった。トジナメランの接種は、小児では1万5,778例が2回目、青年では2万2,072例が2回目、905例が3回目を受けていた。
年齢中央値は10歳(四分位範囲7〜13歳)。女性が50.2%を占め、白人が70.1%、ヒスパニック/ラテン系が25.7%だった。
青年では2回目接種2カ月後に有効性が減弱も、3回目接種により増強
解析の結果、小児ではトジナメラン接種2〜4週間後の感染のオッズ比(OR)は0.40(95%CI 0.35〜0.45)で、推定有効性は60.1%(同54.7〜64.8%)だった。しかし、接種2カ月後はそれぞれ0.71(同0.67〜0.76)、28.9%(同24.5〜33.1%)と有効性が減弱した。
青年では接種2〜4週間後のORは0.40(95%CI 0.29〜0.56)、推定有効性は59.5%(同44.3〜70.6%)だったが、接種2カ月後はそれぞれ0.83(95%CI:0.76〜0.92)、16.6%(95%CI:8.1〜24.3%)と、有効性が著明に減弱した。3カ月後の推定有効性は9.6%(95%CI:−0.1〜18.3%)まで低下し、「有効性なし」と見なされた。推定有効性はその後も経時的に減弱していた。
なお、小児と青年で2回目接種直後、接種1カ月後の有効性に差はなかったが、接種2カ月後の推定有効性は青年に比べ小児で有意に高かった(P=0.01、図)。
図. トジナメラン2回目接種後の推定有効性
(JAMA 2022年5月13日オンライン版)
一方、ブースター接種を受けた青年では、接種2〜6.5週後のORは0.29(95%CI 0.24〜0.35)、推定有効性は71.1%(同65.5〜75.7)と、有効性の増強が示された。
小児にもブースター接種は必要か
小児に対するトジナメランの有効性に関し、Fleming-Dutra氏らは「小児では成人および青年より低用量にもかかわらず、青年と比べて有効性の減弱が緩やかだった。今回の検討は2回目接種2カ月後のみの評価であり継続的なモニタリングが重要となるが、成人や青年のエビデンスを踏まえると、オミクロン株による症候性感染への防御力を最適化するには小児でも追加接種が必要な可能性がある」と述べている。
なおFDAは今年5月17日、2回目接種後5カ月以上経過した5〜11歳の小児に対してもトジナメラン追加接種の緊急使用を承認した。
(宇佐美陽子)