ブラジル・Universidade Federal de Juiz de ForaのÉrica C. Defilipo氏らは、早産の危険因子を検証する目的で症例対照研究を実施し、結果をRev Paul Pediatr(2022; 40: e2020486)に発表した。母親の早産経験、妊娠中に暴力を受けた経験、帝王切開などが早産の有意な危険因子として同定された一方、出産前の診察数の多さは保護因子となっていた。

221例を症例群、442例を対照群として早産との関連を検証

 世界では全ての出産の約11%が早生児とされる。早産は5歳未満の主な死因となるものの、危険因子についてはよく分かっていない。

 Defilipo氏らは今回、ブラジル・Municipal Hospital of Governador Valadaresで2017年5月~18年7月に出生した生産児を対象に、早産と両親の①社会経済学的因子、人口統計学的因子、環境因子、②生殖因子、③行動因子、④健康管理-との関連を検証する症例対照研究を実施。早産は37週以下と定義し、超音波検査、産科医の記録、最終月経日または小児科医の判断のいずれかにより妊娠年齢を確認した早産児332例のうち、母親が登録に同意しなかった例などを除く221例を症例群とした。また、38週~42週で誕生し、出生時に2,500g以上の同じ性別、誕生日の新生児を症例1例に対し2例、対照として選出した(対照群442例)。

 主な背景は、男児が57.9%で、早産児のうち後期早産が78.3%、中期早産が7.7%、早期早産が9.9%、超早期早産が4.1%だった。

妊娠中の暴力被害を見つけ、適切な介入を

 二変量解析により、先述の①~④の各因子のうち、P<0.20を満たしたものを用いて多変量解析を実施する項目を抽出した。①では母親の教育歴(P<0.001)、父親の教育歴(P=0.077)、世帯収入(P<0.001)など、②では母親の早産経験(P<0.001)、新生児の出生時低体重(P=0.004)が、③では妊娠中に暴力を受けた経験(P=0.004)、④では出産前の診察数(P<0.001)、妊娠中のワクチン接種(P<0.001)、出産前のケアの開始(P=0.053)、出産前のケアのネットワーク(P=0.014)、帝王切開(P<0.001)などであった。

 この結果に基づき、多変量解析を行ってオッズ比(OR)を算出したところ、早産の有意な危険因子として高収入(OR 2.08 95%CI 1.41~3.08、P<0.001)、母親の早産経験(同3.98、2.04~7.79、P<0.001)、初産(同1.96、1.34~2.86、P=0.001)、妊娠中に暴力を受けた経験(同2.50、1.31~4.78、P=0.005)、帝王切開(同2.35、1.63~3.38、P<0.001)が、保護因子として出産前の診察数(6回以上、同0.39、0.26~0.58、P<0.001)がそれぞれ抽出された。

 一般に低所得世帯の妊婦では、さまざまな悪条件が重なり、早産のリスクが高まると考えられるが、高所得が早産の危険因子となったことについて、Defilipo氏は「今回の対象は、低所得者層が70%と大多数を占めたこと、同じ地域に居住し同じ病院で出産したことなどから社会経済学的に均質な集団で、高所得の長所が表面化し難かった点が関連しているかもしれない」と考察。また、妊娠への暴力については「アルコール依存、出産前のケア不足、性感染症とも関連するため、妊娠中の暴力の被害者を見つけ、適切に介入できるようなシステムの構築が重要である」と述べている。  

(編集部)