米・University of North CarolinaのJosh M. Evron氏らは、甲状腺ホルモン治療と心血管疾患死亡との関連を検討するため、退役軍人保健局(VHA)データを用いて外因性甲状腺機能亢進症または低下症に対する同治療を受けた成人約70万を対象に、後ろ向きコホート研究を実施。その結果、両疾患患者で心血管疾患死亡リスクが上昇していたとJAMA Netw Open2022; 5: e2211863)に報告した。

TSH、FT4を2回以上測定した70万人を4年間追跡

 最近の研究では、甲状腺ホルモン治療が心房細動および脳卒中発症の危険因子であることが示されているが、心血管死亡との関連は不明であった。

 そこでEvron氏らは、2004年1月1日~17年12月31日のVHAのデータを用いて、甲状腺ホルモン治療の強度と心血管疾患死亡との関連を検討する後ろ向きコホート研究を実施した。

 対象は、甲状腺ホルモン治療を受けた18歳以上の成人70万5,307例〔男性62万5,444例(88.7%)、年齢中央値67歳、四分位範囲57~78歳、範囲18〜110歳)〕。解析は、甲状腺ホルモン治療の開始から死亡または研究終了までに外来で甲状腺刺激ホルモン(TSH)を2回以上測定した70万1,929例、遊離サイロキシン(FT4)を2回以上測定した37万3,981例の2集団で行った。

 外因性甲状腺機能亢進症はTSH値が0.5mIU/L未満(0.1mIU/L未満、0.1〜0.5mIU/Lに分類)またはFT4値が1.9ng/dL超。甲状腺機能正常はTSH値が0.5〜5.5mIU/L、FT4値が0.7〜1.9ng/dL。外因性甲状腺機能低下症はTSH値が5.5mIU/L超(5.5mIU/L超、7.5mIU/L未満、7.5~10mIU/L未満、10~20mIU/L、20mIU/L超に分類)またはFT4値が0.7ng/dL未満と定義した。

 甲状腺がんの既往がある患者は、再発リスクの低減を図るべくTSH値を下げることを目標とするため除外。さらに、リチウムまたはアミオダロンを処方されている患者は、これらの薬剤が甲状腺機能検査結果の異常と関連することが知られているため除外した。生年月日が記録されていない患者も除外した。

 追跡期間中央値は4年(四分位範囲2~9年)であった。死亡の確認と死因に関するデータはNational Death Indexと統合し、2020年3月25日~9月2日まで解析した。

 主要評価項目は心血管疾患死亡率(心筋梗塞、心不全、脳卒中を含む心血管系の原因による死亡)。生存率分析は、血清TSHおよびFT4値を時間変動する共変量としてCox比例ハザード回帰モデルを用いて実施した。

TSH値が20mIU/L超では心血管リスク2.67倍

 解析の結果、全体で7万5,963例(10.8%)が心血管疾患で死亡した。

 年齢、性、既知の心血管危険因子(高血圧、喫煙、心血管疾患または不整脈の既往)を調整後、甲状腺機能亢進症患者では甲状腺機能正常者に比べて心血管死亡のリスクが有意に高かった(TSH値0.1mIU/L未満;調整ハザード比(aHR)1.39、95%CI 1.32〜1.47、同0.1〜0.5mIU/L未満;1.13、1.09〜1.17、FT4値1.9ng/dL超;aHR 1.29、95%CI 1.20〜1.40)。

 甲状腺機能低下症患者でも同様に、心血管死亡のリスクが有意に高かった(TSH値20mIU/L超;aHR 2.67、95%CI 2.55〜2.80、同10〜20mIU/L;2.13、2.05〜2.21、同7.5〜10mIU/L未満;1.76、1.70〜1.82、FT4値0.7ng/dL未満;aHR 1.56、95%CI 1.50〜1.63)。

 以上から、外因性甲状腺機能亢進症と外因性甲状腺機能低下症の両方が、心血管疾患死リスクの上昇と関連していた。

 今回の結果について、Evron氏らは「甲状腺ホルモン治療を受けている患者の心血管疾患リスクおよび死亡を減少させるために、正常な甲状腺機能を維持することの重要性を強調するものである」と述べている。

(今手麻衣)