オランダ・Erasmus University Medical CenterのJoëlle E. Vergroesen氏らは、同国の大規模前向きコホートであるロッテルダム研究の参加者1万例超を対象に、糖尿病治療薬と開放隅角緑内障(OAG)、加齢黄斑変性症(AMD)、白内障との関連を検証。未治療2型糖尿病はOAG、AMD、白内障と関連すること、メトホルミン治療はOAGのリスク低下と、インスリンおよびスルホニル尿素(SU)薬治療はAMDのリスク低下と、それぞれ関連することをJAMA Ophthalmol2022年5月19日オンライン版)に報告した。

眼疾患の診断と生涯リスクを検討

 糖尿病治療薬のメトホルミンは、OAGとAMDに対して保護作用を有することが最近の研究で示唆されている。しかし、横断研究であるが故に因果関係を特定できず、また適応症による交絡の可能性もあり、大規模な前向きコホート研究での検証が求められていた。

 ロッテルダム研究では1990年4月~2014年6月に45歳以上の1万4,926例を登録し、加齢関連疾患の規定因子を検討している。Vergroesen氏らは、同研究から登録時の血糖値、糖尿病治療薬および眼科検診に関するデータがそろっている参加者を特定し、先述の3つの眼疾患の発症を追跡した。

 曝露因子は2型糖尿病とメトホルミン、インスリン、SU薬の使用とし、評価項目は、OAG、AMD、白内障の診断と累積生涯リスクとした。

 対象は1万1,260例で平均年齢は65.1歳(±標準偏差9.8歳)、女性が58.7%で、98.0%が欧州系民族だった。

 2,406例(28.4%)が2型糖尿病と診断され、うち1,388例(57.7%)がメトホルミン、501例(20.8%)が他の糖尿病治療薬による治療が行われていた。OAGは、7,394例のうち324例(4.4%)、AMDは1万993例のうち1,935例(17.6%)、白内障は1万1,260例のうち4,203例(37.3%)で診断された。

糖尿病治療薬による白内障リスクの低下は認められず

 検討の結果、未治療2型糖尿病はとOAG〔オッズ比(OR)1.50、95%CI 1.06〜2.13、P=0.02〕、AMD(同1.35、1.11〜1.64、P=0.003)、白内障(同1.63、1.39〜1.92、P<0.001)との有意な関連が認められた。

 メトホルミン治療は、OAGリスク低下と関連していた(OR 0.18、95%CI 0.08〜0.41、P<0.001)。一方、インスリンとSU薬治療は、AMDリスクの低下(両薬複合OR 0.32、0.18〜0.55、P<0.001)と関連していた。

 OAGの累積生涯リスクは、メトホルミン非投与患者(7.2%、95%CI 5.7〜8.7%)と比べ投与患者で低かった(1.5%、同0.01〜3.1%)。また、AMDの累積生涯リスクは、インスリン・SU薬非投与患者(33.1%、同30.6〜35.6%)と比べ、投与患者で低かった(17.0%、同5.8%〜26.8%)。

 Vergroesen氏らは「糖尿病と白内障の間には明白な関連が示されたが、糖尿病治療薬による白内障リスクの低下は認められなかった。メトホルミン治療はOAGリスクの低下、インスリンおよびSU薬はAMDリスクの低下と関連していた」と結論。「便益の証明には介入試験が必要」と付言している。

(小路浩史)