今年(2022年)5月以降、欧米を中心にサル痘罹患例が相次いで報告されており、現時点で20カ国超の200例以上の罹患例と100例以上の疑い例が確認されている。これまでにサル痘の流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(常在国)への渡航歴のない罹患例も報告されており、前例のない流行であるという。国立感染症研究所は5月26日、国内外の最新状況を第1報として報告した(関連記事「サル痘、現時点の基礎知識はこれだ」)。

常在国以外での報告としては前例のない規模

 サル痘はサル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患で、日本の感染症法では4類感染症に位置付けられている。主にアフリカ中央部〜西部にかけて発生し、自然宿主としてアフリカに生息する齧歯類が疑われているが、現時点では不明である。常在国外においても常在国への渡航者に発生した事例がある。潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされる。症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2~4週間で自然回復するが、小児などで重症化および死亡例の報告もある。

 これまで、常在国以外での報告は常在国からの輸入症例が大半だったが、今回の報告は常在国外からの同一期間の一連の報告として、発生国数、症例数が前例のない規模であるという。

男性間の性的接触による伝播の可能性

 ヒトからヒトへの感染はまれだが、罹患者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露、罹患者が使用した寝具などの媒介物により伝播することが知られている。

 欧州疾病対策センター(ECDC)は、今回報告された罹患例の多くは若年男性で、男性間性交渉者(men who have sex with men;MSM)が多く含まれており、一部の症例では陰部病変を有していたことから、「性的接触での伝播が示唆される」と推測している。また、セックスパートナー以外の濃厚接触があった者では継続的な伝播は報告されていないことから、性的コミュニティーの一部にサル痘が持ち込まれた可能性を指摘している。また、MSMの一部を含む複数のセックスパートナーを有する者におけるリスクは中程度で、その他の幅広い層の人々ではリスクが低いと評価している。

 確定診断例からは、西アフリカ系統群に属するサル痘ウイルスが検出されている。中央アフリカの流行の主体であるコンゴ盆地系統群と比べ、西アフリカ系統群は重症化しにくく、ヒト-ヒト感染事例は少ないとされている。なお、現時点で死亡例は報告されていない。

 ポルトガルの10例と米国の1例で全ゲノム解析が行われており、いずれも非常に近縁であったことから、単一の曝露源の存在が示唆されている。また、2018年に英国、イスラエル、シンガポール、ナイジェリアで解析されたウイルスと近縁であることも明らかにされている。当時検出されたウイルスから一定の変異が見られるが、変異が今回の流行に与えた影響は不明であるという。

日本ではこれまで報告なし

 日本では5月24日時点でサル痘の報告はない。大規模な市中感染の可能性は低く、日常生活における感染リスクは低い。ただし、今後国内でも罹患者が出る可能性があることから、検査・診断を含めた体制を整備しておく必要がある。サル痘に類似する発疹などの症状がある場合は速やかに医療機関に相談すべきであり、またに該当する場合は体調に注意を払うことが重要である。

表. サル痘に注意すべき事例

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〔国立感染症研究所、アフリカ大陸以外の複数国で報告されているサル痘について(第1報)〕

 世界的にサル痘に対するサーベイランス体制は十分整っておらず、水面下で感染が広がっている可能性があるため、国立感染症研究所は「今後も罹患者の報告が続く可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

(安部重範)