中国・中日友好医院のWenying Yang氏らは、ビグアナイド薬メトホルミン単独療法で血糖コントロール不良の2型糖尿病患者を対象に新規機序の糖尿病治療薬であるグルコキナーゼ活性化薬dorzagliatin上乗せの有効性と安全性を検証する第Ⅲ相ランダム化比較試験DAWNを実施。結果をNat Med(2022; 28: 974-981)に報告した。
グルコース感受性とβ細胞機能を改善
メトホルミンは多くのガイドラインで2型糖尿病治療の第一選択薬とされている。主に肝臓における糖新生の抑制により血糖値を低下させるが、メトホルミン単独療法では血糖コントロールが不良で、他クラスの糖尿病治療薬の併用が必要となる患者も少なくない。メトホルミン単独療法の効果減弱には膵β細胞の機能低下が関連しており、この抑制が大きな課題だった。
グルコキナーゼは肝臓や膵β細胞に発現し、全身のグルコース恒常性の保持に重要な役割を担う酵素であり、新規機序の糖尿病治療薬として複数のグルコキナーゼ活性化薬の開発が進められている。これまで糖尿病患者において、グルコース感受性の改善やグルコース恒常性の保持に対する有用性が報告されている。
dorzagliatinは2型糖尿病患者においてグルコースの刺激による膵臓のインスリンや腸管のGLP-1といったホルモンの分泌を制御する一方、肝臓でグルコースとインスリンのシグナルを適正化し、肝グルコース代謝を調節する。これまで、同薬の単剤投与によってグルコース感受性および膵β細胞の機能が向上し、血糖コントロールが改善したことが示されている。
メトホルミン単独を対照にdorzagliatin上乗せ効果を検討
DAWM試験の対象は、2017年10月11日~19年8月30日に①食事療法と運動療法を受けた経験がある、②メトホルミン(1,500mg/日以上)をスクリーニング前に12週間以上使用している、③HbA1c値7.5~10.0%、④BMI 18.5~35.0―などの基準を満たした18~75歳の2型糖尿病患者767例(平均年齢54.5歳、男性62%、平均罹病期間71.5カ月)。
メトホルミン(1,500mg/日)にdorzagliatin(75mgを1日2回)を上乗せするdorzagliatin併用群(382例)とプラセボを上乗せするメトホルミン単独群(385例)にランダムに割り付けて24週間投与。その後は28週間にわたり非盲検下で全例にメトホルミンとdorzagliatinを投与した。
主要評価項目は24週間後のHbA1c値のベースラインからの変化で、安全性については52週間の試験期間について評価を行った。
24週間後にHbA1c値が1.02%低下
検討の結果、24週間後のHbA1c値のベースラインからの変化はメトホルミン単独群の−0.36%(95%CI -0.45~-0.26%)に対し、dorzagliatin併用群では−1.02%(同-1.11~-0.93)と有意な低下が認められた〔群間差の推定値(ETD)-0.66%、95%CI -0.79~-0.53%、P<0.0001〕。有害事象の発現率は同程度で、dorzagliatin併用群における重度の低血糖イベントや薬剤関連の重篤な有害事象の報告はなかった。
Yang氏らは「メトホルミン単独療法でコントロール不良の2型糖尿病患者に対するdorzagliatinの上乗せにより、良好な血糖コントロールが得られ、忍容性と安全性プロファイルも良好だった」と結論している。
プラセボを対象とした単独投与でもHbA1c値は有意に低下
なおYang氏らは、薬物療法歴のない2型糖尿病患者を対象にプラセボとdorzagliatin単独療法を比較した第Ⅲ相臨床試験SEEDの結果についても同誌(2022; 28: 965-973)で報告している。
対象は食事療法および運動療法を3カ月以上実施したHbA1c値7.5~11.0%、BMI 18.5~35.0の2型糖尿病患者463例(平均年齢53.3歳、平均罹病期間11.7カ月)で、dorzagliatin(75mgを1日2回)を投与するdorzagliatin群(310例)とプラセボ群(153例)にランダムに割り付けて検討。
主要評価項目の24週間後のHbA1c値のベースラインからの変化量は、プラセボ群の-0.50%(95%CI -0.68~-0.32%)に対してdorzagliatin群では-1.07%(同-1.19~-0.95)と有意な低下が認められた(ETD -0.57%、95%CI-0.79~-0.36、P<0.001)。有害事象の発現率は両群で同程度であり、安全性に関してもDAWN試験と同様だった。
(岬りり子)