糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬。近年の大規模臨床試験において、糖尿病の有無にかかわらず心不全や慢性腎臓病に対して保護的に作用することが示されている。東京大学病院循環器内科教授の小室一成氏、佐賀大学環器内科教授の野出孝一氏らの研究グループは、レセプトデータベースを用いてSGLT2阻害薬6剤の循環器疾患に対する効果の差を解析。日本で承認されているSGLT2阻害薬の循環器疾患への作用がクラスエフェクトであることが示唆されたとCardiovasc Diabetol(2022; 21: 67)に発表した。

JMDC Claims Databaseの2万5,315例が対象  

 今回の検討では、2005年1月~20年4月にJMDC Claims Databaseに登録され、登録後4カ月以上経過してから糖尿病治療の目的でSGLT2阻害薬が新規処方された循環器疾患で透析治療歴のない2万5,315例を対象とした。

 SGLT2阻害薬の内訳は、エンパグリフロジン群5,302例、ダパグリフロジン群4,681例、カナグリフロジン群4,411例の他、イプラグリフロジン(5,275例)、トホグリフロジン(3,074例)、ルセオグリフロジン(2,572例)の3剤投与例については処方状況などを考慮して、その他のSGLT2阻害薬群と定義した。  

 主要評価項目は心不全、心筋梗塞、狭心症脳卒中心房細動の個別の発症とし、4群間で比較した。

エンパグリフロジン群に対する有意な群間差見られず  

 主な患者背景はおおむね同様で、全体の年齢中央値が52歳、男性が82.5%、BMIが27.8、HbA1cが7.5%などであった。一方、糖尿病治療薬の使用状況については、インスリン処方を受けている割合がエンパグリフロジン群8.4%、ダパグリフロジン群9.5%、カナグリフロジン6.3%、その他のSGLT2阻害薬群8.4%、DPP-4阻害薬がそれぞれ54.2%、50.6%、56.9%、57.2%などばらつきが見られた。  

 平均814日間の追跡期間中に心不全855例、心筋梗塞143例、狭心症815例、脳卒中340例、心房細動139例が認められた。  

 多変量Cox比例回帰モデルで年齢や性、併存疾患、その他の糖尿病治療薬を調整し、エンパグリフロジン群に対する心不全、心筋梗塞、狭心症脳卒中心房細動の発症のハザード比(HR)を算出した。その結果、心不全のHRはダパグリフロジン群1.02(95%CI 0.81~1.27)、カナグリフロジン群1.08 (同0.87~1.35)、その他のSGLT2阻害薬群0.88(同0.73~1.07)で、同様に心筋梗塞、狭心症脳卒中心房細動の各イベントでも有意な群間差は認められなかった()。

図. SGLT2阻害薬の薬剤間における循環器疾患の発症リスク 

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(佐賀大学プレスリリース)

   

 服薬中止例を除いた解析や腎機能を調整した解析などにおいても、同様の結果が得られた。  

 今回の結果を踏まえ、研究グループは「循環器疾患に対するSGLT2阻害薬の効果はクラスエフェクトである可能性が示唆された。これまでエビデンスが乏しかった各SGLT2阻害薬の循環器疾患への有効性について、大規模なリアルワールドデータで示せた意義は大きい」と述べている。

(編集部)