これまでの政府の新型コロナウイルス対策について検証する有識者会議は、6月上旬にも報告書を取りまとめる。発足から1カ月足らず、関係者への聴取は2回で終了するなど、岸田文雄首相が掲げていた「徹底分析」は尻すぼみの格好。司令塔機能の強化や感染症法改正などの課題にどこまで踏み込めるか不透明だ。
 「コロナとの戦い全体の検証は6月までに決着がつくようなものではない。しっかりとした検証を(今後)考えていかなければならない」。30日の参院予算委員会で首相はこう述べ、今回の会議の議論が検証作業としては不十分であることを認めた。立憲民主党の小西洋之氏への答弁。
 昨年の自民党総裁選で首相は「健康危機管理庁」創設を公約。10月の所信表明演説で新型コロナ対策について「徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのか検証する」と表明した。
 ただ、「危機管理庁」設置は政権内でも早くから実現が困難視され、事実上たなざらしに。有識者会議も、初会合が開かれたのはようやく今月11日になってからだ。
 会議には地域医療や企業経営の専門家、若者に関する研究で知られる社会学者らが集められた。だが、17、20両日にヒアリングを実施した程度で、近く予定される4回目の会合で論点整理に入る見通しだ。
 聴取したのも、経済団体や地方自治体の代表、政府分科会メンバーらにとどまり、政策チェックに不可欠な安倍晋三元首相、菅義偉前首相ら歴代の政権幹部は呼んでいない。「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」という正式名称からは、そもそも「検証」の2文字が外されていた。
 会議は司令塔機能、行動制限の在り方を含む感染症対策、医療体制の拡充に関して提言を取りまとめる予定。医療機関に対する政府・自治体の権限強化も積み残しの課題に挙がるが、「医師会が反発しかねない内容は夏の参院選後に持ち越す」(内閣官房幹部)との声もある。
 政府関係者は「わずかな期間で具体策には踏み込めない。報告書は課題を列挙する格好になるだろう」と指摘した。 (C)時事通信社