2022年度補正予算案をめぐる論戦は30日、参院に舞台を移して行われた。立憲民主党は円安に対する政府の反応の鈍さや新型コロナウイルス対策の無駄をただし、攻勢を強めた。これに対し岸田文雄首相は質問に正面から答えない「曖昧」答弁を連発。参院選を意識し、質疑の時間切れを狙う守りの姿勢に終始した。
 「異次元の金融緩和。この政策を変えるための議論を始めるべきではないか」。立民の小西洋之氏は、円安対策としてアベノミクスの柱の一つである異次元の金融緩和を転換するよう迫った。小西氏は「見直さないのであれば『岸田インフレ』とも言うべき失策だ」と訴えた。
 同党の蓮舫氏も、新型コロナ対策の地方創生臨時交付金が自治体によっては公立学校のトイレ改修、町営グラウンドの整備用トラクター購入費に充てられていた事例があると指摘。「いったん交付を止めて必要なものを整理し、残ったものを子ども予算に回すべきではないか」と提案した。
 しかし、首相は小西氏に「(物価への)円安の影響を否定するものではないが、今の物価高騰対策を進めることこそ大切だ」などと答えるだけで金融緩和には言及せずじまい。蓮舫氏の要請に対しても「予算について絶えず検証し、国民が納得する使い方を考える。こうした姿勢は大事だ」と一般論でかわした。
 22年度補正予算案は31日に成立する見通し。残る論戦は週内に予定される衆参両院の予算委集中審議などわずかしかない。6月15日の会期末をにらみ、首相からは無難に国会審議を乗り切ろうという思惑が透ける。
 立民は首相の守勢にいらだちを募らせる。蓮舫氏は質疑終了後、かつて激しい論戦を交わした安倍晋三元首相、菅義偉前首相と岸田首相を比較。安倍氏らは野党の主張を受け入れて課題の解決に動いたと振り返る一方、「岸田さんでは前に進んでいるものが何もない」と手応えのなさを嘆いた。 (C)時事通信社