イスラエル・Technion-Israel Institute of TechnologyのYair Goldberg氏らは、同国保健省のデータベースに登録された570万人超のデータを解析し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染またはファイザー製ワクチン(トジナメラン)接種により獲得した免疫、または両者により獲得したハイブリッド免疫によるSARS-CoV-2再感染予防効果を検討。その結果、再感染予防効果は最後に免疫を獲得したイベント(感染またはワクチン接種)後の経過時間が長くなるほど減弱したが、ハイブリッド免疫を獲得した者では感染歴がないワクチン2回接種者と比べて効果減弱が少なかったとN Engl J Med(2022年5月25日オンライン版)に発表した。
感染・ワクチン接種歴で5群に分けて比較
Goldberg氏らはイスラエル保健省のデータベースから、デルタ株が優勢だった研究期間(2021年8月1日~9月30日)終了の7日前までにワクチンを少なくとも2回接種したか、2021年7月1日以前にSARS-CoV-2感染歴がある16歳以上の者を抽出。①SARS-CoV-2感染歴ありワクチン未接種、②感染・回復後ワクチン1回接種、③ワクチン1回接種後感染、④感染歴なしワクチン2回接種、⑤感染歴なしワクチン3回接種-の5群に分類した(②と③がハイブリッド免疫に該当)。
年齢、性などの交絡因子を調整したPoisson回帰モデルを用い、先述の研究期間におけるSARS-CoV-2感染率を5群間で比較した。その結果、全5群において経時的な免疫の減弱が明らかに認められ、最後の免疫獲得イベント後の経過時間が長くなるほどSARS-CoV-2感染者数が増加し、再感染予防効果が低下することが示された。
6カ月以上経過後の予防効果は感染なし2回接種の7倍超
10万リスク人・日(person-days at risk)当たりのSARS-CoV-2感染者数(調整後感染率)は、①感染歴ありワクチン未接種群において感染後4カ月以上6カ月未満で10.5(95%CI 8.8~12.4)→感染後12カ月以上で30.2(同28.5~32.0)。②感染・回復後ワクチン1回接種群(ハイブリッド免疫群)において接種後2カ月未満で3.7(同3.1~4.5)→6カ月以上で11.6(同10.0~13.5)。④感染歴なしワクチン2回接種群において接種後2カ月未満で21.1(同20.0~22.4)→6カ月以上で88.9(同88.2~89.5)にそれぞれ上昇した。⑤感染歴なしワクチン3回接種群の接種後2カ月未満の者では8.2(同8.0~8.4)だった。
以上を踏まえ、Goldberg氏らは「SARS-CoV-2感染歴がないワクチン2回接種者と比べ、ハイブリッド免疫を獲得した者では再感染予防効果の減弱が少なかった。また、感染歴がある者へのワクチン1回接種および感染歴がないワクチン2回接種者に対する3回目接種(ブースター接種)により、再感染予防効果が感染・回復後またはワクチン接種後の早期におけるレベルまで回復することが示された」と結論している。
(太田敦子)