【北京時事】中国・上海で1日、新型コロナウイルス対策として2カ月間続いてきたロックダウン(都市封鎖)が解除された。今後は、最大商業都市の封鎖で深刻な打撃を受けた経済の立て直しが急務。習近平国家主席(共産党総書記)が「ゼロコロナ」政策に固執する中、経済政策で李克強首相の存在感が増しており、秋の党大会に向け、コロナ対策と経済の両立をめぐる議論が行われているもようだ。
 習主席は国内で市中感染が拡大した3月以降、党内会議や視察先で「ゼロコロナの堅持」を繰り返し指示。社会・経済活動を犠牲にしてでも感染を抑え込むやり方に市民の不満が噴出し、国内外の識者が政策の限界を指摘したこともあったが、そうした声はすぐに封殺された。上海市の宗明副市長は封鎖解除に先立つ5月31日の記者会見で、「上海はゼロコロナ方針を揺るぎなく堅持し、まん延を断固抑制し、人民の生命安全と健康を確保した」と強調した。
 中国は今年、「5.5%前後」の成長率を目標に掲げているが、1~3月期の実質GDP(国内総生産)は前年同期比4.8%増にとどまった。上海にロックダウン措置が導入されたのは3月下旬で、4~6月期への悪影響は避けられない見通しだ。
 こうした中、経済政策の陣頭指揮を執る李首相の存在感が増していると指摘される。李首相は5月25日、全国の行政幹部を集めた10万人規模のオンライン会議を開き、中国経済の悪化に「切迫感を持って対応する」と宣言。経済の困難は新型コロナ流行当初の「2020年より大きい」という認識を示した。10万人という規模に加え、危機感を表立って発言するのは異例で、内外の注目を集めた。
 今秋の党大会で3期目入りを目指す習氏にとって、看板政策であるゼロコロナの失敗は認められない。夏には習氏ら最高指導部メンバーが、現役を退いた長老も交えて非公式の会議を開き、人事などで詰めの調整を行うとされる。感染再拡大の懸念が常に付きまとう中、李首相の進める経済政策の成否が党内人事にも影響する可能性がある。 (C)時事通信社