遅延性広範局所反応(DLLR)は、ワクチン接種後に生じる遅延性の皮膚反応で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のモデルナ製ワクチン接種後に生じる「モデルナアーム」が広く知られている。通常ワクチン接種から1週間後に発生し、4日間ほど続く。自衛隊中央病院皮膚科医長の東野俊英氏らは、モデルナ製ワクチンを接種した5,893例を対象にDLLRの発生リスクを男女別および年齢層別に比較する横断研究を実施。その結果、DLLR発生のオッズ比(OR)は、女性で5.3、18~29歳に比べ30~69歳で1.45~1.89と有意に高いことが示されたと、JAMA Dermatol(2021年6月1日オンライン版)に発表した。
12.7%がDLLRを経験
東野氏らは、2021年5月24日~11月30日に自衛隊東京大規模接種会場で2回目のモデルナ製ワクチン接種を受けた5,893例(男性:3,318例、年齢中央値55歳、四分位範囲38~68歳、女性:2,575例、同50歳、34~67歳)を対象に、DLLRの発生リスクと性および年齢との関連を検討した。初回接種からの期間は4~6週間空いていた。接種後6日目以降に生じた接種部位周辺の紅斑、圧痛、痒み、硬結、灼熱感、腫れをDLLRと定義し、発生状況に関しては皮膚科専門医が聞き取り調査を行った。
DLLRを経験したのは747例(12.7%)。症状はいずれも軽度で、ワクチン接種禁忌に至る例はなかった。
アレルギー性接触皮膚炎と類似
男女別に解析したところ、DLLR発生リスクと女性との有意な関係が認められた〔男性5.1% vs. 女性22.4%、OR 5.30、95%CI 4.42~6.34、P<0.001〕。
年齢層別の解析では、18~29歳〔81/896例(9.0%)〕と比較したDLLR発生リスクは、30~39歳〔129/900例(14.3%)、OR 1.68、95%CI 1.25~2.26、P<0.001〕、40~49歳〔136/861例(15.8%)、同1.89、1.41~2.53、P<0.001〕、50~59歳〔104/699例(14.9%)、同1.76、1.29~2.40、P<0.001〕、60~69歳〔182/1,446例(12.6%)、同1.45、1.10~1.91、P=0.008〕といずれも有意に関連していた。一方、70歳以上との有意な関連は認められなかった〔115/1,091例(10.5%)、同1.19、0.88~1.56、P=0.26〕。
今回の横断研究を踏まえ、東野氏らは「モデルナ製ワクチンの初回接種において、女性、30~69歳でDLLRの発生リスクが高い」と結論。さらに「これらの知見は、ホルムアルデヒドなどの抗原に関連するアレルギー性接触皮膚炎の有病率と類似しており、DLLRがIV型(遅延型)アレルギー性皮膚反応であることを示唆するものである」との考えを示している。
(比企野綾子)