歩行は日常生活に重要な動作であり、健康状態を反映する指標の1つだが、これまで小児の正常な発達を評価するための年齢に応じた歩行動作の基準値は存在しなかった。そこで、名古屋大学保健学科理学療法学教授の杉浦英志氏らは、国内初となる小学生(6~12歳)における歩行基準データを作成。参照データベースの構築過程で、日本人小児と国外の小児では歩行動作が異なることも明らかになったとSci Rep(2022; 12: 7822)に発表した。

歩行中の下肢の動きや歩容をスコア化

 杉浦氏らは、2018年1月~20年3月に愛知県三河青い鳥医療療育センターで運動器検診を受診した6~12歳の小児424人(男児208人、女児216人)を対象に、歩行中の下肢の動きについて調査。骨盤からつま先に14mmの反射マーカーを貼付し、8mの歩行路を3回以上歩行してもらい、三次元動作解析装置を用いて記録3回の平均値を使用して解析を行った()。測定した歩行中のデータから、骨盤、股関節、膝関節、足関節、つま先の向きの動作の運動学的パラメータを算出。これらを点数化することで歩容のスコア(歩行偏差指数:GDI)を求めた。

図. 歩行分析に使用したモデル

小児歩行分析モデル.png

(名古屋大学プレスリリースより)

 さらに、全体のデータから歩行データを作成し、GDI を基に歩行のパーセンタイル発育曲線(成長曲線)を作成。各年齢の歩行動作を比較するために、6~8歳、9~10歳、11~12歳の3群に分けて、歩行中の下肢の動きやGDIを評価した。

股関節の動きは軽く内股、高学年になると歩幅が短縮し歩数増加

 その結果、歩行中の下肢の動きの多くは3群で類似しており、足関節の動きもあまり変化がないことが示された。一方、股関節と膝関節の屈伸の範囲は、年齢が高くなるにつれ徐々に小さくなることが分かった。特に11~12歳群は足が地面から離れたときに膝が曲がる最大角度が小さく、歩行中の膝の可動域も小さいことが分かった。また、GDIは6~8歳群よりも11~12歳群で有意に高く(P<0.0001)、歩容に優れることが示された。

 さらに諸外国のデータと比較したところ、①日本の小学生は歩行中の股関節の動きは軽く内股で、高学年になっても大きな変化は見られない、②高学年になると歩幅が短くなり1分間当たりの歩数は増加する―などの相違が示された。

 杉浦氏らは「今回、国内初の小児における歩行の基準データを作成したことで、歩行状態を評価するツールとして有用なだけでなく、歩行障害の整形外科治療やリハビリテーションの効果判定への使用も可能となった。また歩行分析のデーターベースは、今後の小児を対象とした歩行研究への活用が期待される」と述べている。

(植松玲奈)