加齢黄斑変性(AMD)は中心視力を失う主な原因である。米国立眼研究所(NEI)は、加齢性眼疾患研究(Age-Related Eye Disease Study:AREDS)による臨床試験結果を受け、中等度AMD例に対し抗酸化ビタミンと亜鉛、銅を含有するサプリメントの摂取を推奨している。後期AMDへの進行抑制に有益な栄養成分を検討しているAREDS2研究グループは、AREDSサプリメントへのルテイン+ゼアキサンチンおよびω3脂肪酸の追加に関する長期成績をJAMA Ophthalmol(2022年6月2日オンライン版)に報告。ルテイン+ゼアキサンチンの追加により後期AMDへの進行抑制効果が高まることが示唆されたという。

ARMDS2の追跡調査で栄養成分の長期的意義を検証

 米国で3,500例以上を対象に実施されたAREDS試験の結果、抗酸化ビタミン(ビタミンC、E、βカロテン)と亜鉛、銅を含有するAREDSサプリメントがAMDの進行リスクを5年間で25%低減することが示された。しかしながら、βカロテンは喫煙者および喫煙歴がある人の肺がんリスクを上昇させるとの知見が示されたため、βカロテンをルテイン+ゼアキサンチンに変更すること、ω3脂肪酸〔イコサペント酸(EPA)+ドコサヘキサエン酸(DHA)〕を追加する意義などについて検討するAREDS2試験が実施され、ルテイン+ゼアキサンは肺がんリスクを高めないことが明らかになった。

 一連の結果を受け、AREDSサプリメントだけでなく、βカロテンをルテイン+ゼアキサンチンに変更したAREDS2サプリメントが市販されているが()、βカロテン摂取例での肺がんリスクの上昇が試験終了後も持続するか否かや、AREDSサプリメントにルテイン+ゼアキサチンを追加することの長期的な有益性については明らかでない。

表. AREDSおよびAREDS2サプリメントの栄養成分含有量

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 そこでAREDS2研究グループは、AREDS2試験に登録された中等度AMD患者4,203例中3,882例を対象に追跡調査を実施。平均年齢72.0歳、男性1,642例、女性2,240例、6,351眼であった。同試験追跡調査におけるランダム化はの通りで、一次ランダム化では主にルテイン+ゼアキサンチン、ω3脂肪酸摂取の意義、二次ランダム化では主にβカロテン、亜鉛摂取の意義を検討した。

図. AREDS2試験追跡調査におけるランダム化

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(表、図ともJAMA Opthalmol 2022年6月2日オンライン版を基に編集部作成)

ルテイン+ゼアキサンチンはβカロテンの代替成分になる

 10年間の追跡期間中に117例が肺がんを発症、6,351眼中3,040眼(48%)が後期AMDへと進行した。10年後の肺がん発症のオッズ比(OR)は、βカロテン群で1.82(95%CI 1.06〜3.12、P=0.02)、ルテイン+ゼアキサンチン群で1.15(同0.79〜1.66、P=0.46)と、βカロテン群でのみ有意な関連が示された。

 ルテイン+ゼアキサンチンの追加による後期AMD進行のハザード比(HR)は0.91(95%CI 0.84〜0.99、P=0.02)とルテイン+ゼアキサンチンの保護的な効果が認められたが、ω3脂肪酸の追加については有意差が認められなかった(HR1.01、95%CI 0.93〜1.09、P=0.91)。亜鉛高用量に対する低用量のHRは1.04(95%CI 0.94〜1.14、P=0.49)、βカロテンなしに対するありのHRは1.04(同0.94〜1.15、P=0.48)で、有意差はなかった。

 βカロテンありに対するルテイン+ゼアキサンチンへの変更による後期AMD進行のHRは0.85(95%CI 0.73〜0.98、P=0.02)と、ルテイン+ゼアキセンチンの進行抑制が認められた。

 今回の追跡調査から、研究グループは「ルテイン+ゼアキサンチンの安全性は、βカロテンの代替品としてさらに支持されることが示唆された。ルテイン+ゼアキサンチンの追加は肺がんリスクの点で安全であるだけでなく、後期AMDへの進行予防の増強が期待できる」と述べている。

編集部