中国・首都医科大学/中日友好医院のLixue Huang氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院後に生存退院した患者1,000例超を2年間追跡。COVID-19生存退院例では、入院中の重症度にかかわらず身体的および精神的な健康状態は経時的に改善しており、89%が2年以内に元の仕事に復帰した一方で、半数超が後遺症を有し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴がない者に比べ健康状態が著しく悪かったとの結果をLancet Respir Med(2022年5月11日オンライン版)に発表した。
最多症状は疲労感、筋力低下、睡眠障害
解析対象は、2020年1月7日~5月29日に武漢市の金銀潭医院を生存退院したCOVID-19患者1,192例(退院時の年齢中央値57.0歳、男性54%)。主要評価項目は後遺症(Long COVID)、modified British Medical Research Council(mMRC)息切れスケールで評価した呼吸困難の程度、EQ-5D-5L質問票に基づく健康関連QOL、6分間歩行距離(6MWD)で評価した運動能力、復職状況、退院後の医療の利用状況とし、COVID-19発症から6カ月後、12カ月後、2年後の時点で評価した。
解析の結果、Long COVIDを1つ以上有する割合は、6カ月後の68%から12カ月後には49%へと有意に低下したが(P<0.0001)、2年後には55%と上昇に転じた(P=0.0010)。入院中の重症度を問わず、疲労感、筋力低下、睡眠障害の報告が多かった。
呼吸困難(mMRCスコアが1以上)を有する割合は、6カ月後の26%から2年後には14%へと有意に低下した(P<0.0001)。 健康関連QOLは、ほぼ全ての項目が2年間で改善しており、特に不安または抑うつ症状を有する割合は6カ月後の23%から2年後には12%へと有意に低下していた(P<0.0001)。
6MWDが正常範囲の下限を下回る割合は、6カ月後の14%から2年後には8%へと有意に低下した(P<0.0001)。2年後の復職率は89%だった。復職しなかった理由として報告されたのは身体機能の低下、復帰を望まない、失業だった。
2年後も運動能力、QOL、メンタルヘルスの悪化リスク が残存
多変量調整後の解析では、2年後にLong COVIDの症状を有する群では有さない群と比べ、運動能力および健康関連QOLが低く、メンタルヘルスおよび退院後の医療の利用が多かった。Long COVID群におけるオッズ比(OR)は、移動障害で3.81(95%CI 1.62~8.93)、疼痛/不快感で4.42(同3.14~6.21)、不安/抑うつ症状で7.46(同4.12~13.52)、外来医療の利用で2.82(同1.99~4.00)、再入院で1.64(同1.12~2.41)に上った。
また、COVID-19生存退院例はSARS-CoV-2感染歴がない対照群と比べ、2年後に日常活動の障害(2% vs. 1%未満)、疼痛/不快感(23% vs. 5%)、不安/抑うつ症状(12% vs. 5%)を有する割合が有意に多く、EQ-VASスコア(0~100、高スコアほどQOL良好)に基づくQOLの自己評価が有意に低かった(80.0 vs. 85.0、全てP<0.0001)。
さらに、女性ではLong COVID(OR 1.65、95%CI 1.41~1.92、P<0.0001)、疲労感/筋力低下(同1.29、1.10~1.52、P=0.0022)、不安/抑うつ症状(同1.94、1.59~2.37、P<0.0001)、肺拡散障害(同2.86、1.92~4.26、P<0.0001)との有意な関連が認められた。
COVID-19急性期治療におけるステロイド薬投与は、疲労/筋力低下のリスク増加と関連し(OR 1.36、95%CI 1.12~1.64)、年齢はLong COVIDの長期化および拡散障害との正の関連が見られた。年齢が10歳上昇するごとにCOVIDの長期化リスクは8%上昇し(OR 1.08 95%CI 1.02~1.15)、拡散障害リスクは33%上昇した(同1.33、1.14~1.54)。
以上の結果から、Huang氏らは「Long COVIDの発症機序の解明と効果的なリスク低減策の開発が急務である」と結論している。
(太田敦子)