米・Kaiser Permanente Bernard J. Tyson School of MedicineのJoanne E. Schottinger氏らは、医師の内視鏡検査における腺腫検出率と検査後の結腸直腸がん発症リスクとの関連を検討するため、内視鏡検査でがんが検出されなかった73万5,396例を対象に後ろ向きコホート研究を実施。その結果、腺腫検出率が高い医師による大腸内視鏡検査を受けた人では、検査後に結腸直腸がんを発症するリスクおよび結腸直腸がんで死亡するリスクが有意に低いことが示されたと、JAMA(2022年6月7日オンライン版)に発表した。

がん非検出の73万5,396例を中央値3.25年追跡

 Schottinger氏らは、2011年1月~17年6月に内視鏡センター43施設(医師383人)で大腸内視鏡検査を受け、がんが検出されなかった73万5,396例(50~75歳、年齢中央値61.4歳、四分位範囲55.5~67.2歳)を、2017年12月まで追跡。結腸直腸がん発症との関連を調べた。追跡期間の中央値は3.25年(四分位範囲1.56~5.01年)だった。

 主要評価項目は、大腸内視鏡検査後6カ月以降に診断された結腸直腸がんの発症とした。がんの発症は腫瘍登録で確認した。副次評価項目は、大腸内視鏡検査後の結腸直腸がんによる死亡とした。

検査後6カ月以降の結腸直腸がん発症は619例、死亡は36例

 約240万人・年の追跡期間中に、619例が結腸直腸がんを発症し、36例が結腸直腸がんで死亡した。

 解析の結果、腺腫検出率が高い医師による内視鏡検査を受けた人は、検査後の結腸直腸がん発症リスク〔絶対腺腫検出率1%上昇当たりのハザード比(HR)0.97、95%CI 0.96~0.98〕、結腸直腸がん死亡リスク(絶対腺腫検出率1%上昇当たりのHR 0.95、同0.92~0.99)がいずれも有意に低かった。性による有意な相互作用は認められなかった(相互作用のP=0.18)。

腺腫検出率を中央値で2分して解析

 腺腫検出率を中央値で分割して解析したところ、低検出率群(28.3%未満)と比べ、高検出率群(28.3%以上)では検査後の結腸直腸がん発症リスクが有意に低かった(1万人・年当たり1.79例 vs. 3.10例、大腸内視鏡検査でがん非検出の1万例における7年間の絶対リスク差-12.2、95%CI -10.3~-13.4、HR 0.61、95%CI 0.52~0.73)。

 同様に、結腸直腸がんによる死亡リスクも有意に低かった(1万人・年当たり0.05例 vs. 0.22例、大腸内視鏡検査でがん非検出の1万例における7年間の絶対リスク差-1.2、95%CI -0.80~-1.69、HR 0.26、95%CI 0.11~0.65)。

 以上から、Schottinger氏らは、本研究の限界について「①大腸内視鏡検査後の結腸直腸がんによる死亡例が少ない、②腺腫検出率が35%以上の医師は少なく、検査症例も少ない、③医師の検査経験や検査症例の背景が異なる集団には当てはまらない可能性がある」とした上で、「腺腫検出率が高い医師による大腸内視鏡検査は、検査後の結腸直腸がんのリスク低減と有意に関連する」と結論している。

(比企野綾子)