イスラエル・Sheba Medical CenterのGilad Twig氏らは、同国の全青少年140万人超を対象に過体重/肥満と1型糖尿病発症の関係を後ろ向きに検討した結果を第82回米国糖尿病学会(ADA 2022、6月3~7日)で発表。BMI過剰高値は2型糖尿病だけでなく、若年成人期の1型糖尿病発症にも関連し、肥満では1型糖尿病発症リスクが倍増することが示された。
16~19歳の青少年をBMIで6群に分けて検討
1型糖尿病は従来、体重に関係なく主に小児期に発症するとされていたが、青年期、成人期でも発症する。また、ほぼ全世界で増加している糖尿病は主に2型糖尿病で、肥満/過体重、身体活動の低さ、坐位行動の増加などが危険因子とされている。最近の研究では、低年齢児においてBMI上昇と1型糖尿病との関連が報告されているが、青年期のエビデンスは限られており、1型糖尿病の約半数は若年成人期(18歳以上)に発症するとされている。そこでTwig氏らは、青少年期のBMIと若年成人期の1型糖尿病発症との関係について検討した。
対象は1996年1月~2016年12月にイスラエルの徴兵検査を受けた高血糖の既往がない16~19歳の青少年142万6,362人。データはIsraeli National Diabetes Registryの成人発症1型糖尿病の情報とリンクさせた。登録時の体重と身長の測定データを基にBMIを算出し、Cox比例ハザードモデルを用いて年齢、性、社会人口学的変数を調整、BMIと1型糖尿病発症リスクの関係を解析した。
1,581万9,750人・年の追跡期間中に、新規1型糖尿病の発症が777例に認められた(診断時平均年齢25.2歳)。
BMIを5パーセンタイル未満、5~49パーセンタイル、50~74パーセンタイル、75~84パーセンタイル、85~94パーセンタイル(過体重)、95パーセンタイル以上(肥満)に分けて見ると、新規1型糖尿病の発症はBMIの上昇に比例して増加し、BMIと1型糖尿病発症に関連が認められた。
過体重で1型糖尿病リスク54%上昇
登録時の年齢、性、出生年、教育歴、認知機能スコアを調整後の解析でも、BMI上昇に伴い1型糖尿病発症リスクが上昇した。1型糖尿病発症リスクは、米疾病対策センター(CDC)が青少年期のBMIの至適範囲とする5~49パーセンタイル群に対し、5パーセンタイル未満群では39%低下〔調整ハザード比(aHR)0.71、95%CI 0.50~1.00〕、50~74パーセンタイル群では5%上昇(同1.05、0.87~1.27)、75~84パーセンタイル群では41%上昇(同1.41、1.11~1.78)、過体重群では54%上昇し(同1.54、1.23~1.94)、肥満群では倍増した(同2.05、1.58~2.66)。全体の解析では、BMIが5上昇するごとに1型糖尿病発症リスクは35%上昇した。
以上から、過体重と肥満の青少年では1型糖尿病発症リスクの上昇が認められ、ベースライン時に治療や医学的フォローアップが必要な慢性疾患を保有しない青少年に限定した解析でも結果は同様だった。
Twig氏らによると、肥満と自己免疫疾患の関連を示すエビデンスが増えているという。その上で、肥満に関連する炎症性アディポカインやサイトカインの増加が、糖尿病発症につながる炎症誘発プロセスを促進することで自己免疫寛容の破綻につながると考察している。
同氏らは「ビタミンDの欠乏、高脂肪食の摂取、腸内細菌叢の変化など肥満に関連する因子は、自己免疫応答の誘導に寄与する可能性がある。われわれのコホートでは、自己免疫疾患保有例を除外しても、青少年期の肥満と1型糖尿病に関連が見られたことから、肥満関連因子が肥満と1型糖尿病を媒介している可能性が示唆された」と説明した。
以上から、同氏らは「BMIの過剰高値は健康な青少年で若年成人期の1型糖尿病発症リスクが上昇することが示された」と結論。「青少年期肥満に関連する健康被害について新たなエビデンスを提供した。これまで報告されてきたように、青少年期の肥満は若年成人期の2型糖尿病発症と関連するだけでなく1型糖尿病発症とも関連している。肥満人口の増加により生じるリスク全般への適切な対処や、体重と1型糖尿病両方に関連する環境因子を特定するためのさらなる研究が必要だ」と付言している。
(大江 円)